第7話 続 遠い国の返事 中 感謝

「あれ。見えるか?小さなボートが見える・・・・誰か人が乗っているようだ。」

ボトルさんは思い切り飛び上がって海面に出ました。遠い向こうに確かにボートと人影が見えます。

「あれは!!あれはニャーモさんだ!ニャーモさんがボートに乗っている。」

「じゃあ、ニャーモさんは君達を探してボートで沖に出たのか?急ごう。日が暮れる。」 シーラカンスさんはスピードを速めました。そしてボートにだんだんと近づいて行きました。もうはっきり見えます。間違いなくニャーモさんです。

「ニャーモさん、ニャーモさぁん!」

メールボトル19は大声で呼びました。その声がニャーモさんに届きました。

「メールボトル19!!本当にあなたたちなのね、おおお、メールボトル19!!」

ニャーモさんの声もはっきり聞こえました。シーラカンスはとうとうニャーモさんのすぐ横までたどり着きました。

「ニャーモさん、ニャーモさん。会えた。戻ってくることができた。ニャーモさん。」

今度は手紙さんもキリエさんも泣き出しました。ニャーモさんも泣き出しました。

「メールボトル19,ニャーモさんに言いなさい。私の鱗から紐を外して君達をボートに乗せるように。」

シーラカンスさんの言ったことをニャーモさんに伝えました。ニャーモさんは身を乗り出してシーラカンスの鱗から紐を外してメールボトル19をボートに引き上げました。

ニャーモさんはメールボトル19をしっかり抱きしめました。帰ってきてくれた。私のところに戻ってきてくれた。言葉では表せないほど嬉しかったのです。

「ニャーモさん、ボートで私たちを探してくれていたのですね。私たち長い旅の覚悟をしました。その時、このシーラカンスさんに出会って助けてもらったのです。」

シーラカンスさんは言いました。

「ここで君達と別れたらもうこんなに暗くなっている。無事に浜辺に着けるかどうか分からない。灯りの見えるところまで一緒に泳いで行こう。私に付いてくるようにニャーモさんに伝えなさい。」

 ニャーモさんは何度もありがとうと言いました。その言葉はシーラカンスさんには分かりませんでしたが、それでもニャーモさんの気持ちはしっかり伝わりました。


「こんなに暗くなるまで海にいてはいけないとわかって居たの。でも、どうしてもあなたたちを置いて浜に戻ることができなかったの。海に居て良かった。あなたたちは本当に運がいいわ。いつでも良いお魚さんに助けられて。」

シーラカンスさんは間違いなくデンパサールの浜辺に向かいました。やがて、ホテルの灯りも見えてきました。

「ここまで来たらもう大丈夫だろう、あまり浅瀬まで行くと今度は私が海にもどれなくなってしまう。」

「ニャーモさん、灯り見えるよね?もうボートを漕いで戻れるよね。」

「大丈夫、このまままっすぐ行けばほどなく浜辺よ。」

メールボトル19はシーラカンスさんにお礼を言いました。助けてくれたこと、浜辺近くまで連れてきてくれたこと。たくさんのお話をしてくれたこと。ニャーモさんに再び会わせてくれたこと。

「良かった、君達が笑顔になって良かった。ではここで、さらばだ。」

「ありがとう!ありがとう!!!シーラカンスさん、お元気で。」


ニャーモさんは手を伸ばしてシーラカンスさんの背中を優しくなでました。私の大切なメールボトル19を守ってくれてありがとう、と。


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