第6話 続 遠い国の返事 中 あのエイヤが・・・
そう。そして昔昔、あの辺りは戦争ばかり起こって、たくさんの船が沈んでしまった。そして難破船になった。地中海の底には数知れない難破船が眠っている。
ある日、雌のマダラトビエイがサメに追いかけられた。必死で逃げるエイ。そのエイに『こっちへおいで』と誘うような歌が聞こえたそうだ。そのエイは誰かが助けてくれるのだと思って声のする方にどんどん逃げていった。そして、難破船にたどり着き、ここに隠れたらいいのだと思って隙間に入り込んだ。サメは諦めて行ってしまった。
エイはああ、助かったと思ってその隙間からでようとしたのだが・・・・体がはさまって抜け出せない。どんなにもがいても抜け出せなかった。」
「それで?それで?マダラトビエイの雌さんはどうなったの?死んじゃったの?」
「いや、生きている・・・・・そのエイは、同じマダラトビエイのエイヤという魚の婚約者だったのだ。結婚を約束した雌のエイだったのだ。」
「マ、マダラトビエイのエイヤさん!?」
「君は知っているのか?」
「はい、私がメールボトルとして流されて、暫くしてサメに襲われた時に助けてくれたのがエイヤさんで、地中海を通ってスエズ運河の前まで送ってくれたのです。」
「そうだったのか・・・・・・では・・この話は・・・・・辛いな・・・・
エイヤは婚約者の姿が見えなくなったので探した。そしてサメに聞いたのだ。悪戯してあの子をやっつけてしまったのじゃないかと。するとサメは言った。確かに追いかけた・・でも彼女は難破船に隠れてしまった。だから諦めて戻った。と。
エイヤはとても愕き、地中海の底に潜って婚約者が隠れた難破船を探した。とうとう見つけた。婚約者はエイヤが来てくれたことでどんなに心強かっただろう。自分が抜け出せなくなった事を言うと、エイヤは力の限り彼女を引っ張った。引っ張ってとうとう彼女をその割れ目の隙間からひっぱり出したのだ。
その時・・・・・・静かに眠っている難破船に強い力が加わったものだから、もうさび付いてぼろぼろになっている船体が崩れたのだ。エイヤの上に。エイヤの上に・・・ひとたまりも無かった・・・・エイヤは崩れた鉄くずの下敷きになって死んでしまったのだ。」
聞いていたメールボトル19は声がでなくなりました。あのエイヤが・・エイヤが・・・難破船の下敷きになって死んでしまった・・・・・婚約者を助けようとして・・・・・エイヤが・・・・
「婚約者は泣いて泣いて、そしてマダラトビエイの長老の処に行きすべてを話した。長老はあの辺りを住処としているマダラトビエイを全部集め、エイヤが眠った処に行きみんなでお弔いをした。その時、いつも悪いことばかりしているサメの仲間達も集まってエイヤにお別れをしたのだよ。サメだけじゃない沢山の種類の魚たちが集まった。
エイヤはみんなからとても好かれている明るい青年エイだった。正義感が強くて困っている魚をほうってはおけない。エイヤに助けられた魚は山ほどいる。みんな非常に悲しんだ・・・・
長老はサメ達に言った。『こんな残念なことが起こってしまった。もうあまり悪ふざけはしないでくれ。』と。そして集まった魚たちに言った。『難破船には近寄るな。危険すぎる。この海には沢山の難破船がある。見かけたらそこから離れるように』と。」
「エイヤさん・・・・・かわいそうに。でも婚約者さんもかわいそうに。その婚約者さんはどうなったの?」
手紙さんが聞きました。
「うん・・・・綺麗なマダラトビエイだったから、沢山の雄のエイがお嫁さんにしたいと望んだが・・・彼女は誰とも結婚はせず、時々こっそりとエイヤの亡くなった難破船の処に行ってエイヤに話しかけている・・・私はそんな彼女に偶然出会ってこの話を聞いたのだ。」
お話を聞いたメールボトル19はしょんぼりしてしまいました。それでもエイヤさんは立派なエイだった、勇敢なエイだったと誇らしくも思いました。
「君達の知り合いだったからこの話は辛かったかもしれないが、ずっとエイヤのことを忘れないであげたらいいのだ。こんな素晴らしい友達がいたことを、幸せに思うことが大切だよ。」
シーラカンスさんはそう言ってくれました。
その言葉を聞いてメールボトル19は、確かにその通りだ。私たちは絶対にエイヤのことは忘れない。気持ちを切り替えてエイヤの為に祈った時、シーラカンスさんが言いました。
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