第5話 続 遠い国の返事 中 難破船
「ところで君たちは北に向かおうとしていたのだね。行かなくて良かった。あそこから少し北へ行くと大きな難破船がある。そこに挟まってしまったら君たちはもうどこへも行けなくなってしまっただろう。」
メールボトル19が初めて聞く言葉でした。
「難破船ってなんですか?」
「うん、地球の海の中には数え切れないほどの難破船がある。船だ。船が大きな岩にぶつかって穴があいてしまったりすると、船の中に海水が入ってきて沈んでしまう。岩だけじゃ無い。嵐に巻き込まれて大波が甲板に押し寄せて、その為に沈んでしまうこともある。
それから愚かしいことだが戦争だな。大砲を撃ち合って船に穴が開いて沈んだり、爆発によって船がこなごなになって沈んだり。そういう船は海の底に沈んで難破船と呼ばれるようになる。
難破船にはしだいに貝たちがへばりつき住処にしたり、藻や海草のたぐいもそこにはびこる。小さな隙間をねぐらとする小魚たちもいっぱいいる。そんなだからちょっと見ただけではそれが大きな船の残骸だということが分からない。それで近寄って行って命を落とす魚もいるのだ。
壊れてしまった船だからあちこちに割れ目があって、そこに挟まってしまうともう抜け出せない。君たちがそんなことにならなくて本当に良かった。」
難破船の話を聞いてメールボトル19は怖くなりました。海には私たちのまだ知らない危険がいっぱいあるのだと思いました。
「君たちを送っていくデンパサールの浜辺までは、しばらく時間がかかる。多分お日様が沈む頃になるだろう。難破船の話をもう少ししよう。
難破船とて元は人間が乗っていた船だ。沈んでしまって乗っていた人はおおかた死んでしまう。けれどそんな哀しい死に方をした人間達の魂が漂って居て、歌を歌うのだ。」
「歌!!死んでしまった人達が?」
「そう、寂しいのだろうな・・・『こっちへおいで、こっちへおいで』と歌っている。実のところそれは波の音なのだが、人間の歌声に聞こえるのだ。
その歌声によってとても悲しい出来事があった。
三年前のことだった。地中海と言う場所があって。」
「ああ、地中海は私も通りました。」
キリエさんが言いました。
「そうか通ったことがあったのか。綺麗な景色のところだ。北はヨーロッパ、南はアフリカ。」
「地中海の南はアフリカ・・・・・」
キリエさんはまたアフリカと言う言葉に反応しました。
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