第22話 思春期病

 あまりにも仕事探しが難航していて行き詰まったある日、ついに真奈美に弱音を吐いた。


「オレ、普通に働くの向いてないかも」


「えっ、それ今さら言う?」


「なんだよ。真奈美はわかってたの?」


「そりゃあ。ずっと一緒にいるから何となく」


 なんだ、バレてたのか。

 遂にっていうのは大袈裟だったな。


 家で悶々と悩んでいてもより深みにハマってらちが明かないので、気分転換に自然豊かな公園まで自転車を走らせた。こういう時は田舎って最高だなと思う。おいしい空気も爽やかな風も緑がいっぱいの緑道も心地よい。人が少ないのもとてもいい。


 緑道の脇にある木の切り株の形をした椅子に腰掛けた。空気が透き通るように冷たく、木枯らしが吹いていた。薄曇りの空を見上げる。


 目の前には芝生が広がっていて、小さな子どもたち……たぶん保育園の子ども達だろう……が芝生をきらきらした笑顔で走り回っていた。老夫婦が仲良く散歩している。ランニングしている男性もいる。みんなそれぞれ好きなように好きなことをしている。ゆっくり時間が流れているようで心地よかった。


『なんで人間は働かないといけないのだろうか』

とか

『なんで世の中にはお金の制度があるのだろうか』

とか

『何のために生まれてきたのだろう』

とか

 最近のオレはまるで思春期みたいなことばかり考えている。


 音楽以外で自分にどんな仕事が向いているのかが全く分からなかった。ならば、どうやったら音楽を続けられるかに焦点を絞って策を打っていけばよかったのかもしれない、とも思う。音楽活動はあくまでも休止で辞めるわけではないし。


 とかなんとか……結論の出ない思考のループにはまり込んでいる。


 ほーんとにさ。歳を重ねて、見た目だってそれなりなのに中身はいつまでも子どものまんまだ。


 好きな人と、好きな場所で、好きなものに囲まれて、好きなことだけして生きていきたいと未だに夢物語を夢見続けている。

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