第13話 悪夢の翌日

「昨日はホントごめん!!!」


 朝起きて昨日の焼肉屋での大失態を思い出した。恥ずかしくて、穴があったら入りたいよ。


「うん。私は平気だけど。ウーロン茶って言ったのに、ウーロンハイが出てきたんだね」


「そうだったのかな。ヤラレタなぁーー。焼き肉久々だったのに」


「また、行こうよ」


「無理。あの店は当分やめとくよ。オレ、変だったでしょ? 恥ずかしくてもう行けない」


「騒がしい店だし、店員さんも忙しそうで、たぶん楓のこと誰も気付いてないから大丈夫だって」


 真奈美は笑いながら慰めてくれた。


 記憶はちゃんと全部あった。頭の中の声が止まらなくなって、涙が止まらなくなって、ずっと泣いていた。ただそれだけだ。


「楓、辛かったら我慢しなくていいんだからね?」


「うん。ありがと……」


 真奈美がそれをオレに言ってくれるのかよ。一番辛いのは真奈美の方だろう。なのに何でそんなに男前なんだ……


「ずっと我慢していたものが、お酒飲んだ拍子に出て来ちゃったのかな、と思ったよ」真奈美は言った。


「そうなのかな。とにかく、ごめん。次はもっとウマい店行こうな!」


 色々溜め込んでいたことは確かだった。真奈美の病気のこと。これからのこと。色々考えていかないといけないのに。

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