第26話 四度目の夏
島根に移住してから四度目の夏を迎えようとしている。
天気がコロコロ変わるように、オレ達の日常も晴れもあれば曇りもあるし、時には雨が降ることもあった。やっぱり人生は『晴れのち曇り時々雨』の繰り返しだ。
何もない人生なんてつまらないから、晴れの恩恵も恵みの雨も有り難く受け取って、楽しんだ者勝ちなんだと思う。
音楽活動を一旦休止したことに関しては、今のところ後悔はなかった。もし、自分のタイミングや流れが向いてくることがあれば再開する可能性も残しているつもりだ。
*
「楓。茶碗の梱包終わってる?」
「うん。バッチリ、終わってるよ!」
オレは陶器の絵付け師になった。真奈美の焼いた陶器に絵付けすることもあるし、自分で陶器から作ることもあった。絵も陶芸もまだまだ、勉強中ではあるけど、最近は仕事も少しずつ増えてきて順調だった。
昔から好きだった絵を描くことが、こんな形に活かせるなんて何がどう転がるかわからないものだ。
絵の仕事の幅を広げたいと思っていて、絵本作家としても活動しているんだ。
絵本は、なんと今三冊目を描いているところだ。
一冊目の絵本は特に思い入れが強いものだった。
オレの絵の活動のきっかけとなった記念すべき作品である月と太陽の茶飲み茶碗に
月と太陽はお互いを思い合っている。昼と夜で見える時間は違うけれど、目に見えないだけでそこには存在している、という話だ。
日食や月食のことも子ども達にもわかりやすいように簡単に表現した。
*
真奈美の病状はと言うと、残念ながら少し悪化していて、入院することが度々あった。これに関しては、思い通りにならないことの方が多くて何度も泣いてる。でもご両親と同居しているので、色々助けてもらえているのは有り難い限りだった。
ご両親とオレは真奈美を大切に思っている者同士の連帯感ができた。一人で思い悩むよりも、こうしてご両親が近くに居てくれて本当に心強かった。
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