第7話 二つ目の理由

 入院生活は暇だった。


 コロナの隔離病棟の個室はまるで特別待遇みたいに快適だった。無症状の自分が使うには申し訳ないぐらいだ。オレじゃなくてもっと必要としている人に回したらいいのにと思った。


 真っ白な壁と真っ白なベッドや枕。病院だから当たり前だけど殺風景そのもののような部屋だ。小型のモニターが置いてあったけど、観るには有料のテレビカードが必要だった。テレビぐらい自由に観せて欲しいと不満を抱きながらも、番組を厳選してセコく視聴した。


 昼寝から目覚めてボーっとしながら、無意識のうちに頭にメロディーを思い浮かべたり、歌詞を作っている自分に気付いた。


 最近は新しい曲を作るというフェーズとはかけ離れてきているけれど、これだけ時間を持て余しているのだから発表するしないに関わらず曲作りもいいかもしれない、とも思った。


 入院と言えば読書が定番だ。一冊でかなりの時間を費やすからコスパがいいし場所も取らない。でも、オレは本が苦手だから無理だった。看護師さんにお願いして、コスパは悪いけど漫画を買ってきてもらった。


 真奈美の状態は、看護師さんを通じて教えてもらっていた。気胸という症状が起きているらしい。気胸とは、肺から空気が漏れることで、肺がへこんでしまう病気だと聞いた。咳、胸の痛み、呼吸困難が起きたりするそうだ。話を聞くだけでも痛そうだ。すぐにでも様子を見に行きたいのに。


 時間だけはあり余っていたので、コ口ナのことや気胸のことも色々ネットで調べていた。


 オレは医者じゃないし、病気のことは全然よくわからないけれど、コ口ナと気胸は呼吸器に関わるものという共通点はあるものの、全くの別モノだということはわかった。


 オレも全然症状がないし、真奈美は二週間以上前からあの症状があったのだから、真奈美はコ口ナじゃなくて単に気胸なんじゃないだろうか、と思ってしまった。


 単にって言い方は良くないかな。大変な事態には変わりないけれど、今話題の流行病になってしまうと色々と問題がありそうでイヤだった。うちは陶芸教室もやっているしさ。コ口ナじゃなかったってことにならないかなーと短絡的に思っていた。


 翌々日、その考えが的中していたと知らされた。

でも、それは、コ口ナよりも最悪な事態だった。


 精密検査で『リンパ脈管筋腫症みゃくかんきんしゅしょう』という病気だということが判明したのだ。


 これが移住の二つ目の理由だった。


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