第6話 流行病
その時期、真奈美の体調が優れないことがよくあった。コ口ナの影響で、自粛生活が続いていて、ストレスが溜まっているのかな、と最初はあまり深く考えていなった。
しかし、そのうち寝込むことも増えて、階段の上り下りなんかで息苦しそうにしていることもよくあった。よく咳き込んだりして、呼吸器系の症状が出ていたため、コ口ナを疑い病院を受診した。
「コ口ナですね。すぐに入院です。ご主人は症状は出ていませんが濃厚接触しているので、隔離入院が必要です」
医者は感情のこもらない淡々とした口調でそんなことを容赦なく言い放った。
ヤバいぞ。どうしよう。今話題のコ口ナになってしまうとは。当時はまだ初期だったので、ひとたびコ口ナに罹ったとなると、地域中の話題になってしまいそうな状態だった。
真奈美は苦しそうだったのでそのまま病院に待機してもらい、オレはすぐに一時帰宅し、二人分の入院グッズをスーツケースに詰め込んだ。頭の中は真っ白でとにかく無我夢中で入院支度に集中した。
お互いの両親に言うべきか迷ったけれど、余計な心配をさせても仕方がないので、言うのはやめておいた。真奈美の実家は島根だし、僕の実家は北海道だ。急に家に訪ねてくることもないだろうから、気付かれることもないだろう。
陶芸教室の生徒さんたちに何と言えばいいのだろうか。どうしたらいいか即座に思いつかず、名簿一式を入院セットに突っ込んだ。いざとなったら、入院先からメールや電話でお知らせしよう。
最後に、暇つぶしグッズを入るだけ入れておこう。オレは漫画だな。そして、真奈美は文庫本。読みかけのものや目についたものを適当にスーツケースに詰め込んだ。
その時はコ口ナになってしまったことに何の疑いもなく、ただただ驚きと焦りと不安で一杯だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます