ニセ勇者の幸せなスローライフ

【--】それからしばらくしてのオレたち

※ふらっと書き足ししました。続きはまた気が向いたら書くかもしれません。

※勇者と偽勇者が二人共一人称がオレなのがややこしいので、勇者のほうは「俺」に変えていこうと思います。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 隣国奥地の牧場兼農場に住み始めてから、そろそろ3年近く経つ。


 最近、マティたんとオレの間に赤ちゃんが産まれた。

 赤ちゃん、可愛すぎる。何あのちっちゃい手。

 はわぁー!って声でちゃう。

 産まれたのは女の子だよ! 


 目に入れたい。目に入れて痛くないって言いたい。無理だけど!

 名前どうしようかなぁ!! なかなか決まらない!


 出産にあたって、オレは産後は大変、と前世でも聞いてたし、街のおばさんからも散々言われたから、マティたんを心配していたけれど――マティたんはさすが聖女、治療・回復のプロフェッショナル。


 産む時も無痛にしてて余裕だったし、産んだあとも自分で自分を治療してあっという間に妊娠前のマティたんに戻った。というか戻りすぎた。


「あの……エルナン様。私、治しすぎちゃって……。初めてに戻ってしまいました、それでその……」


 不安そうにオレを見上げるマティたん。


 ……。


「大丈夫、優しくするから」

「エルナン様……っ」


 嬉しそうに涙を浮かべて抱きついてくるマティたん。

 ドジっ子な新品……じゃなかった新生マティたんかわゆす。最高かよ。


***


「~♪」


 ある日オレは、朝食を食べながら、オレは新聞ニュースを眺めていた。


「……へー。隣国で勇者を探してるのか。勇者が行方知れずで困ってるのか。魔王はもう倒されたはずだが」


 勇者業をほっぽり出したことは気にしてないわけではなかったが、世間では本物勇者が魔王を倒したらしいし一安心。ありがとう本物勇者! でもどうして行方をくらませたのかな! 魔王倒したんだからご褒美満載で酒池肉林できそうなのに!


 オレがつぶやくと、向かいに座っていたシリウス君――数ヶ月前からうちで住み込みで働いてくれてる彼が言った。


「魔王軍の残党がいるので、それを始末してもらいたいんじゃないですかね。1人で」

「うわ、鬼畜。別に予言通りじゃなくていいから部下でも用意してやりゃいいのに」

「エルナンさん……あなたは本当に常識的で素晴らしい」


 え、なんか普通の意見言っただけだと思うけど褒められた。


「そ、そうかな。普通じゃない?」

「普通って……そうそう手に入らないものですよね」


 シリウス君がどこか遠い目をして言った。


 雇用する時の面接で、彼はそれまで冒険者だったというのは聞いたことはあるが、もっと深い――彼の過去に踏み入って聞いたことは、まだない。


 彼にはどこか聞きづらい雰囲気があるので口にはしていない。

 人には色々あるものだ。

 オレにだって語れないことがある。例えばニセ勇者だったとか。


 今、オレと一緒に働いてくれる良き仲間、それだけで十分だと思っている。


 それにしてもシリウス君はイケメンだな。

 濃紺の髪にアイスブルーの瞳。

 背は高いし姿勢も良い。農場で働く姿もいちいちサマになる。


 まるで物語の主人公のようだ。

 それでいて、落ち着いていて穏やか。しかしどこか闇を感じさせるなにかがある。

 こういう男、女性は好きだろうなぁ。


 オレとは大違いだ。


「そのうち、その国滅びるんじゃないかしらね。内政がとってもいい加減そうだもの」


 ウインナーを食べながらアレクサさん――シリウス君の奥さんが言った。

 アレクサさんもまたストレートの銀髪に赤い瞳といった特徴的な色合いをした人だ。

 この世の特別な人間、そんな感じがする。


 そういえばマティたんもサラサラストレートの銀髪。髪型も似ているし2人ならんでると瞳の色が違う姉妹のようだ。


「ま、まあ。そうなったら国民はかわいそうですね」


 すこし慌てた表情のマティたんが、ちょっとカクカクした。

 ……マティたんは聖女の役割ほったらかしてしまったのだものなぁ。

 オレは優しく微笑んで首を横に振った。


 マティたんは何も気にしなくていいんだぉ。

 だってもう魔王は滅びたんだしぃ。


 オレの笑みにマティたんが、ふふ、と微笑み返す。

 Oh……my……(震え)。


「まあそうなる前に誰かが王に取って変わるんじゃないですかね、というかそう祈ってますよ、俺は。ごちそうさまです」


 シリウス君はそう言うと席を立った。


「よっしゃー。今日もがんばるかー」


 アレクサさんも立ち上がってシリウス君についていく。


 ほぎゃー!


 と娘の鳴く声が聞こえて、あらあら! とマティたんが立ち上がる。


「オレがいくよ、マティ」

「え、でも」

「まだ食べ終わってないだろう。さっきミルクはやったから、多分おしめだ」


 オレはほらほら、とマティたんを椅子に座らせ食事の続きをさせる。


「じゃ、じゃあ甘えちゃいますよ?」


 マティたんが、可愛らしい声で言う。


「おう」


 オレはマティたんにそう言うと、もうひとりのMy天使のところへ向かうのだった。


 しーあわせー!!




――――――――――――――――――

勇者の名前→シリウス

ナカミ(魔王)→アレクサ

となりました。

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【 お前を追放す……しない! 】追放系悪役に転生したオレは気がついたらヒロインとスローライフしてた。 ぷり @maruhi1221

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