03 マティたんと畑を耕す。


 2~3日たつと、マティたんは起き上がれるようになった。

 その間にオレは街へ行って、マティたんに似合いそうな服をしこたま買い込んできた。


「な、なんですか? このお洋服の山は!!」

「……つい、買ってしまった。要らないなら捨てる」


「そんなもったいないこと、しません!! でも、お金が」

「金の心配するなら、これから頑張って稼いでいこう。これは初期投資だ」



 たんに、マティたんを着せ替えして楽しみたかっただけですが。


 オレは白いレースのついたケープをマティたんの頭からふんわりとかける。

 いつか聖女になった時、似合いそうだと思って買ってきた。


「……似合ってる」


 オレはにっこり笑った。


「……エルナン、様」


 マティたんは何故か顔を真っ赤にして涙目になった。


「さてと、それはよそ行きだが。ちゃんと作業着も買ってきたぞ」

「さ、作業着ですか?」


 ケープの端を握りしめながら聞いてくるマティたん可愛い。100点。


「ほら、オーバーオール。これも似合いそうだな! これを着て明日から二人で畑を耕すぞ!」


 オレはマティたんをからかいながら言った。


「も、もう、エルナン様ったら。……でも、オーバーオール、私可愛くて好きです。足腰を鍛えるのでしたよね? 私、頑張ります!!」


 ふふっと可愛く笑うマティたん、200点。


「ああ、お互いがんばろうな!」



*****


 翌日から、二人で畑を作り始めた。


「はあ~。若いとはいえ、腰にきますね! これ!!」

「ああ、修行になる」

「はい!!」


 もとは畑だった場所を、耕し直していく。

 うむ、素人だがわかるぞ。これはなかなか良い土ではないか?


 しばらくすると、馬車にのった白い髪に白いヒゲの老人がやってきた。


「あら、どちら様でしょう」

「アントニオじいさんだ。街で知り合った。ああ、畑に植える苗や種芋を購入したんだが、大量だったから運んできてもらったんだ」

「まあ! 植えるの楽しみ!」


「エルナンくんよー。買ってもらった苗だけど、ここらへんに置いていいのかーい」

「あ、はい! アントニオじいさん、ありがとう!」

「こんにちは! アントニオ様ですね! よろしくお願いします!」


「おや、可愛いお嬢さんが一緒じゃないか……ああ、奥さんかね?」

「お、奥さんだなんて……」

 オレが反応する前にマティが真っ赤になった。


「おやおや、その初々しい反応。どうやら新婚さんだね。何か困ったことがあったら力になるからのう、二人共」


 オレは肯定もせず否定もしなかった。

 こういう場合は、好きに思わせておくほうがいい。


「し、しんこん……」


 ただし、マティたんのほうは真っ赤だった。

 マティたん、オレなんかと新婚に間違えられたくらいで、そんな真っ赤にならなくても。純真なんだから……可愛い。

 だが、その真っ赤な反応はちゃんと将来の旦那の勇者のためにとっておかなきゃだめだぞ。

 そう思うと胸がすこしチクリとした。


 ……?

 なんだろうこの胸の痛み。



「ほっほっほ。じゃあ頑張ってのう~」


 お茶くらい出す、といったが、新婚の邪魔になるからとアントニオさんはすぐに帰って行った。

 別にいいのにな。


「く、空気の読めるおじいさんでしたね。つ、次はお茶をお出ししましょうね」

「ああ。じゃあ作業の続きをしようか」


「はい……あっ、痛っ」


 その時、マティたんが近くの柵にたてかけていたクワを取ろうとして、柵からでていたトゲで指をさした。


「……大丈夫か?」


 オレはマティたんの手を取って、トゲを抜いた。


「痛ぅ……、……え!」


 オレは血がでてきたので、マティたんの指をくわえた。


「消毒だ」


「あ……は、はい……」


 マティたん、肌がずっと赤いよ? 可愛いけど大丈夫かな?


「さっきからずっと赤いが……熱がぶり返したか?」

「……ち、ちがいますっ。……ふぁっ!?」


 オレは自分の額をマティたんの額にくっつけた。


「どうやら平熱のようだ。だが、今日はすこし暑いから――」


「も、もう!! エルナン様!! こ……子供扱いしないでくださいっ!!」


 マティたんが顔がまっかなまま怒った。

 ひょっとして怒りで赤かったのか? ごめんね! マティたん!!


「すまない。そんなつもりはなかったのだが。……だが、大丈夫なら良かった。作業は続けれるか?」


「……。は、はい……」


 そのあと、マティたんは、そんなに飛ばして大丈夫? と問いたいくらい猛スピードで耕していた。


「すやすや……」


 夕食後、ソファで寝てしまった。


「やれやれ」


 オレはまたお姫様だっこして、彼女のベッドに運んだ。


「おやすみ、マティたん」


 オレは彼女の頭をなでて、部屋から出た。



「ま、まてぃたん?? たん、て何かしら」

 その後、目を開けてベッドの中、また真っ赤になっていたマティたんのことを、オレはちっとも知らなかった。



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