【023】水飛沫の音が聞こえる
同日 放課後
キーンコーンカーンコーン
一日最後の授業終了を知らせるチャイムが鳴る。
「「「起立!礼!ありがとうございました」」」
ガラガラガラッ!ドドドーーーーッ!
生徒が一斉に立ち上がり、教室から飛び出していく。
ショウは、ゆっくり席から立ち上がり、カバンを持ち教室を出た。
廊下の窓から、たくさんの生徒が部室棟に走って行くのが見える。
ゆっくりとした調子のまま、階段を降りるショウ。玄関で外ぐつに履き替え、校舎の外へ出た。
アルバイト部の方向に背を向けて、逆側へ歩いていくショウ。
本校舎の軒下を進んでいくと、遠くにレンガで作られた花壇が見えてきた。
ジャーーー
水飛沫の音が聞こえる。
音の先には、一人の女子生徒。水道から伸びているホースを持って、シャワーを花壇へ噴射していた。
ショウは、スルリと近づき挨拶する
「お疲れ!サッキー!」
「……っわ!え?ショウさん!?」体をビクとさせて、驚くサッキー。
「ごめん!ごめん!驚かせて。」
「ビックリしました……どうしてここへ?」
「なんとなく散歩、それでサッキーが見えたから声かけた!」
「……そっそうなんですね、お疲れ様です」
サッキーは、気を取り直すと水やりを再開した。
ジャーーー
「うおー、ここの花、凄いね!絵になってる」
目の前の花壇には、白色や赤色、黄色に橙色、青色と紫色などカラフルな花がぎっしりと咲いていた。
さらに、文字や動物のシルエットに見えるように美しく植えられている。
「……はい、とても綺麗です」
サッキーは、返事をしながら水が遠くまで届くようにノズルを持ち上げる。
「本当に凄い。これ作ったの、誰だろう?」
「……え?えっと。エリート科の委員の人ですね」
「あーそうか。ここも『衛生管理得点』の対象か、そりゃ気合も入る」
「……ですね。エリート科は、学校の清潔や風紀を保つのも大切ですが、このような芸術や……文化を美しく魅せるのも大切な役割になりますから」
「なるほどね、エリート科もご苦労さんだ。ところでサッキーが、水やりをしているのは頼まれ事?」
「……あ、あの。そうですね……知り合いの方から頼まれたので」
「もしかして、お昼休みに話してた?」
「え!?なんで知ってるんですか?」
「いや、たまたま教室の席から見えただけ」
「……ビックリしました……ショウさん、勘が鋭そうな雰囲気があるので」
「ワハハ。実際勘も鋭いと思う!」
ショウは、お調子の良く笑いながら話を続ける。
「それで、サッキーのやっている事ってエリート科がやる事だから。気になってさー」
「……うう、気づかれましたか」
気まずそうに返事をするサッキー、ショウは、さらに事情を聞いて行く……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます