【015】もしかして、間に合わない?
「お!サッキー、そこに空き缶!」
花壇の周りを見ているサッキーに声をかけるショウ
「……どこですか?」
「そこそこ!木の隙間」
「あ……ほんとだ、ビールの缶……。隠すように捨ててあって嫌な気持ちになりますね」
サッキーは、ジトっとしたため息をつく。
「だねー、堂々と捨てられても、嫌な気持ちになるけど」
ゴミ拾いを始めて数時間、燃えないゴミを集めていたサッキー。
空き缶のごみでビニール袋があっという間にパンパンなっていた。
「ショウさん、そこ、花壇のところにタバコの吸い殻が……」花壇に手を向けるサッキー
「あった!よく見つけたね。花壇にタバコの吸い殻を捨てるなよなー」
「はい……許せませんね……」
ショウは、表情を曇らせていくサッキーを見て、気分転換に話題を振る。
「ところでサッキーは、普通科の2年生だよね?」
「え?はい。そうですけど……何かありましたか?」
「えっと、『負債』どれくらい残っているのかなーって気になった」
「あぁ……、ショウさんは1年生だから、気になりますよね……」
また余計なことを聞いてしまったとショウは、頬を擦り気まずそうにする。
しかしサッキーは話を続ける。
「えっと、私、『負債』はもう無いんです」
「そうなの?すごい!それじゃ、次の学期でエリート科に編入するって感じ?」
「あ……あの、えっと。実は、エリート科の知り合いに返済してもらっていて」
「え?ん?」
「あ!ごめんなさい。ショウさんは、普通科とエリート科の仕組みってまだわからないですよね」
「えっと、確かエリート科の生徒は、普通科の生徒の『負債』を成績で稼いだポイントで相殺できるってやつだっけ?」
「はい、そんな感じです。知り合いの方ですが、去年からエリート科に居まして、1年生の時からお声かけいただいてました」
「えー?ホント?いいなー!」
「はい。恵まれてましたね……」あまり嬉しそうではない表情をするサッキー
「何かあった?」ショウは、事情が気になる。
「去年……1年生の学期末の頃だったでしょうか、その方と関係がこじれてしまいまして……」
「今期までに、肩代わりした分を集めてお渡ししないと、『退学権』を行使されてしまうことになりました」
「『退学権』か……ちなみに、間に合いそう?」
「そうですね、毎日真面目に、アルバイト部に取り組めば何とかなりそうかなと思っているのですが……」
少し間をおいて、サッキーは話を続ける。
「私が鈍臭くて悪いのですが、最近、あまり良い仕事に当たらなくて、稼ぎが悪くなってしまって……」
「もしかして、間に合わない?」
「おそらく……厳しいかもって考えてました……」
想像より重たい話を聞き、反応に困るショウ。
沈黙の時間が流れ、ショウはどう反応するか考えていた……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます