俺の話を聞いて下さい。

@satomi1112

本文

誰も俺の事を理解することはないだろうとは思っていなかったけど、ここまでとは思わなかった。

ちょっと酷いと思うので、俺の話を聞いて下さい。お願いします。この通りです!!切に願います!!



俺は…一応公爵家の3男です。次男の様に、長男のスペアというポジションでもないので、まぁ親の俺の接し方はそんなもんだろうと思う。

特別に大事にもしないし、気にもかけない。でも世間体というものがある。みたいな感じだろうか?

それでもおかしいと思う。



何がおかしいって、俺がさぁ。絵画展で入賞したとする。実際したことあるけど。

かけられる言葉は、「どの使用人に描かせたの?」だ。

俺が描いたんだけど?おかしくね?


他に学園の試験で主席を取った時、かけられた言葉。

「カンニング?公爵家に泥を塗るんじゃないわよ?」だ。

実力なんですけど?


剣術の大会で優勝した時にかけられた言葉。

「なんで同年代の王家の子を勝たせなかったの?奇跡的にあんたが優勝したみたいだけど?」など。



どう考えてもおかしいと思うだろ?思って然るべきだと俺は思うのです。

そして、親がかけるべき言葉はまず俺自身を褒めろ!なぜ?他の人物とかカンニングとか俺が“できない”人間だと決めつけているのか俺にはわからない。



え?その頭脳と剣術で下剋上?…フフフ、それは面白そうですね。やってみましょうか?



翌日より俺はまず自分の兄達の実力がどの程度なのかを知ろうと思った。まずは知ることから始める。


なんだ、二人の兄はどんな大会でも入賞経験がないのか…。剣術においても頭脳においても俺の方が勝っているという事は明らかだな。

これが親が俺を褒めない理由だろうか?兄達に入賞経験がないというのにあっさり入賞した子を褒める訳にはいかない。と。

なんてくだらない理由だろう?そんなことで俺はいちいち傷ついていたのか?馬鹿らしい。

さて、公爵家の当主の座をいただく?そんなみみっちいことを俺は考えない。

兄達には到底できないようなことを俺はしようと思う。そして、兄達は悔しがるといいさ。




俺の目標は『ラルク商会』の商会長の警護。俺の頭脳と剣術で『ラルク商会』の商会長のガードをするようになるのだ。

すると必然的に各国の有力王侯貴族と顔合わせる機会が多くなる。

たかだか一国の公爵など相手にならない。


俺は早速『ラルク商会』の商会長に書簡を送った。数種類の言語を用いて。俺の頭脳をアピールだ。内容はズバリ「俺をガードで雇ってみませんか?」


商会長は俺に興味を持ったらしく(そうだろうな、あの言語の数)、剣術で今ガードでついているものと勝負するようにと言って、刃が潰れた真剣を渡された。

これは…東方の刀と言われるものか?刃は潰れているが、本気でやるとかなりの威力が出る代物と俺は見た!


俺は西の剣術しか知らなかった。井の中の蛙というやつだ。

あっさりと現在商会長を警護している男に負けてしまった。この男は逆に東の剣術しか知らないらしい。


しかし俺は商会長の警護に雇ってもらえることとなった。負けてしまったが。悔しいので、現在の警護している男、ニースに西の剣術を教え、ニースには東の剣術を教えてもらい、二人で切磋琢磨し、商会長のガード2人は強くなった。



俺は頭脳でも使えるので、商会長にはごくまれに通訳を頼まれる。商会長自身が複数の言語を操るのでその機会は少ないが。


他に俺の頭脳を使う機会は、商会の帳簿をチェックする時に発揮される!

俺のチェックの前で横領を帳簿に残すようなヘマをした支部は商会長直々に出向き、大掃除という名の大規模解雇がされる。

俺がチェックをするようになって楽になったと商会長には喜んで頂けている。商会長は奥様が臨月で一刻も早く家に帰りたいという感じだから(多忙なのに)、俺の手が助かるらしい。


俺のチェックのせいで職を失ったらしい元・ラルク商会の職員に襲われたこともあるが、俺はただの頭でっかちではない!本職は商会長のガードだ。

職を失う原因だって横領だっていうのに、逆恨みもいいところ。横領した金があるだろうに…。

俺はあっさりとこの男を退けた。当然の結果。




本日は、ラルク商会の商会長は商会が大きくなったキッカケでもあるアキヤ貝について話し合いをするために東方の国に行く。当然国王に会いに行く。俺は久し振りに緊張したのだが、ニースに「緊張すると、あとから自分はバカだったなぁと思う」と告げられた。そうなのか?


「国王におかれましては「何をあらたまっているのだ?ラルク殿らしくない!ん?護衛が一人増えたのか?」


「はい、私の事ですか。アーバンクルク国ピーク公爵家が3男ポータスと申します。以後お見知りおきを」


商会長と国王は旧知の仲のようで、非常に良い関係のようだ。

「最近のアキヤ貝のあの石の売れ行きはどうだ?」

「だいぶ浸透したらしく、これ以上の需要は…。といった感じです」


そうだ!あの石の需要を作ればいいのだな?

「では、冠婚葬祭に欠かせないという触れ込みにするのはいかがでしょうか?」

と、俺は提案した。今まではアクセサリーとしての需要だけだった。しかしながら、俺の提案はどうだろう?冠婚葬祭の時に身につけていても、楚々としている。しかも、色からして喪服には強調される。どうだろう?

「そうだなぁ、その線で売り込みをしてみるのも手だな。一つやってみるか。まずは支店の半分で試してみよう」

「需要があれば供給が必要だな。ポータスよ。天晴れ」

「お褒めに与かり光栄です」


ふっ、こんなやり取りうちの公爵家を継いだくらいじゃできない。俺はこれを求めていたんだ!


さて、こんな状態を兄達に見せたいところだが、商会長が忙しい=護衛も忙しい。なので、そんな暇はない。



ある日、商会長がアーバンクルク国の重鎮と商談をもつこととなった。当然兄ではない。


「おや?君は確か、ピーク公爵家のご令息では?」


「流石ですね。しかしながら、現在はこうしてラルク商会の商会長の護衛をしております」


「ラルク商会の商会長の護衛をするくらいだから、さぞかし有能で、剣術に長けているのでしょうね。いや、商会長が羨ましい!」


「それで…」

と、商談は進んだ。俺の目論見通りだ。こうして俺の名声がアーバンクルク国内にもひろがるだろう。

その時には、父上は大きな魚を逃がしたと思い、兄上達は歯噛みをするのだろう。これがやりたかったのだ!!

アーバンクルク国内の社交界にも俺の名前が広がるかもしれないな。そうすれば、母上が歯噛みすることだろう。


商会としていい商談になったようだ。なによりだ。



商会長から呼ばれて話があった。

「ポータスは結婚しないのか?」


そんなこと、考えてもいなかった。…結婚。そう言えば適齢期みたいな年齢なのか?

そういうわけで、商会長直々に見合いの席を設けてくれた。


「アーバンクルク国の侯爵家が次女のウェアリーにございます。ポータス様の生家の爵位よりも低い爵位の家で恥ずかしいですわ」


「あー、俺はこの生活してるから爵位とか気にしなくなった。もちろん商談の席では重視するが、他は特に気にしていない。ウェアリーにはもっと気楽にしてほしい」


「あー、怠かった。お見合いの席なんだもん。ちょっとは令嬢らしさが求められるでしょ?私はそういうのめんどくさくて嫌いなのよ。無理だけど、爵位を捨てて生活って方がいいわよね」


「爵位がなかったら、使用人がいないから家事全般できないといけないし、自分でお金稼げないといけませんよ?」


「無理かぁ。でも、一生猫かぶりの生活も嫌だったんだよね」


「俺でよければ、ウェアリー嬢を引き取るよ?婚約とかピンとこないんだよね?」


「わかる~」

同意された…。


結果、ウェアリー嬢を俺の住まい(護衛をするようになって、使用人を雇えるほど裕福になった)に引き取ることとなった。ウェアリー嬢は料理を勉強するなりしてほしい。俺の金で散財するようなら、追い出すと言ってある。


「あ、そうだ。アーバンクルク国内の社交界で俺って話題になるの?」


「超話題の人!公爵家が手放したのが惜しいよね~ってみんな言ってる。そんで、ポータスのお母様が悔しい顔してる」

おお、社交界の方でも俺は話題になって、うちの公爵家の人間に精神的ダメージを与えているのか!やったね!


「公爵家に戻るの?」


「まさか!この生活の方が自由でしかも各国の要人と会えるんだぜ?公爵家にいたら、会えないような要人に会えるんだ。絶対こっちの方がいいね」



……とまぁこんな感じ。彼女とどうなったか?あぁ、その後はきちんと結婚して俺も一児の父親というやつだ。今は。

商会長のガードをしてるとなかなか家族にも会えないからなぁ。家族に、特に子供に俺の事忘れられないか心配―。帰れるときは帰って、異国のお土産を持っていくことにした。そんなだから、うちの中はなんだかインテリアに統一感がない。うーんそれも俺のせいだから、それで子供に嫌われないか心配だ。


へ?子供の性別?女の子だけど?「嫁にやらん!」とかないのかって?それは、可愛いんだけど、いつかは嫁ぐもんだし、逆に嫁がない方が心配になる。だから、俺が嫌われなければいい。


俺は目的も果たしたし、このまま生活していくだけ。アーバンクルク国に戻る気は全くなし。以上です。


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