第38話 暗闇の中の音楽セッション
涼子は「虚無堂」での新たなイベントとして「暗闇の中の音楽セッション」を企画した。このイベントは、参加者が完全な暗闇の中で生演奏を聴き、音楽の純粋な感動を体験することを目的としていた。
イベントの準備として、涼子は虚無堂のメインホールを使用し、全ての光を遮断できるよう厚いカーテンで窓を覆った。ホールの中央には小さなステージを設置し、アコースティックギター、バイオリン、ピアノなど、様々な楽器が並べられた。
参加者たちは一人ずつ静かにホールに案内され、ガイドの声に従って各自の席に着いた。涼子は参加者に、目を閉じて心を開くように促し、間もなく始まる生演奏に身を任せるように説明した。
暗闇の中、最初に響き渡ったのはアコースティックギターの優しい旋律だった。次第にピアノとバイオリンが加わり、複雑で豊かなハーモニーを奏で始めた。視覚のない環境で、参加者たちは音楽の一音一音をより深く、感覚的に捉え、演奏から伝わる感情に直接触れることができた。
音楽セッション中、参加者たちは自然と身体を揺らし、リズムに合わせて静かに手拍子を打つ者もいた。暗闇がもたらす集中力と音楽が一体となり、通常のコンサートでは感じられない独特の空間が生まれた。
演奏が一段落すると、涼子はゆっくりとホールの明かりを点け、参加者たちを現実に戻した。彼女は皆に感想を尋ね、多くの人が「暗闇の中での音楽は、全く新しい感覚であり、音に対する感度が増した」と感想を述べた。また、音楽の純粋な感動を共有することができたことに感謝する声も多く聞かれた。
涼子はこの「暗闇の中の音楽セッション」が参加者に与えた新しい音楽体験の価値に満足し、今後もこのような独特なイベントを企画することを決意した。このイベントが参加者たちにとって音楽を感じる新たな方法を提供し、彼らの音楽に対する見方に変革をもたらしたことを願いながら、涼子は次のイベントの準備を始めた。
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