文化祭と生徒会

「あ、彩花ちゃん。いらっしゃいな」

「ども、闌」


 少々文実に借りていかれた咲楽を置いて、私は一人で生徒会を訪れていた。文化祭準備期間中にやっておかないといけない諸々の手続きのためである。しかし案の定おんなじような目的で集まった生徒達で生徒会室は溢れかえっていてコミケ度がますます高くなってる。そんな中で私は闌に肩を叩かれた。


「相変わらずこの時期の生徒会ってめちゃめちゃ混むね」

「ま、そうですね。コスプレ申請って直前に気分変わるやつ多すぎてこの時期にしか受け付けてませんし。っていうか彩花ちゃんもそれでしょう?2枚持ってるから咲楽ちゃんの分ですよね。生徒会はコネ大歓迎なので処理しといてあげますよ」

「とても生徒会長の発言じゃないね」

「別に辞めさせられたってすぐにクーデター起こすから問題ないです」

「え、立候補しよっかな」

「やですよ、従姉手にかけるの」


 周りを見るとセーラームーンからのこたん、ニコニコテレビちゃん、せんとくん、戦兎くんとよりどりみどり。どれもハイクオリティで仕立部頑張ったな〜って感じだけど、やっぱり生徒会はそんな中でも目を惹くくらい力が入ってる。スペース・エレシュキガルまでカバーしてるのは流石といったところ。ちなみに今は目の前で闇コヤン三臨と光コヤン三臨とタマモがコンコンして遊んでるとこ。すごい。


「そういえば彩花ちゃんステージ上がるんでしたっけ?何歌うか決まってるんですか?」

「メズマライザーと、あと脳漿炸裂ガール」

「へー、ちなみにUTAUとSVどっち仕込んだんですか?」

「どっちも」

「うっわ、やってますねぇ」

「生徒会はなんか用意してないの?」

「そう言われても本部はホヨバ統一の文実に貸しちゃいますし、こんなものしかないですよ」


 そう言って闌はどこからか「ドッキリ大成功」とか「最後尾」のノリで「人類悪 氾濫」と書かれたプラカードを取り出す。


「用意したんだ」

「はい。「顕現」も「変生」も「蒐集」も「生殖」も「喝采」も全部あります」

「おお」

「ちなみに光コヤンが「蒐集」で闇コヤンが「生殖」持ってます」

「諸説だねそれ」

「音も流れますよ」


 闌が持ち手部分のボタンを押すと、「ああ、なんか覚えてるなぁ」って感じのBGMが流れてくる。どうやら音量調節も出来るらしい。手が込んでる。


「そういえば闌が確認した中で一番やばいコスプレって今年どこ?」

「あー、例年だったら衣冠束帯とか狩衣とか十二単用意してくる書道部なんですけどねー。今年はアレがあったので……」

「アレ?」

「ほら、ニコ動の騒ぎですよ。あの件で漫研とパソコン部が組んでテーマ「ニコニコ」でブチ上げたんです」

「うっわ」

「凄いですよ。さっきのニコニコテレビちゃんもそうですし、ハルヒ、ジャガーマン、矢部野彦麿、あとはまあ……あれです」

「学園モラルが問われるね」

「はい。なので「どうにかこじつけてそれじゃないことにしてください」とは言いました。指摘した汚名は甘んじて私が受けましょう」

「初めて生徒会長っぽいこと言ってるの見たよ、私」

「生徒会長なんですけど」


 「ああ、そうだったね」と私は笑った。

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