五十四言目 柚木原さんと約束

「で、何で柚木原さんが生徒会に?」

「だから2年前、ちょうど中学の生徒会辞める時ですかね?に彩花ちゃんと約束したんですよ」

「そうなの?柚木原さん」

「まぁ……」


 そして柚木原さんは少し面倒そうにしながらも曖昧に相槌を打つ。生徒会長、霜月さんは「しょうがないですねえ」と説明を始めた。


「まず、さっき言ってた通りにボクと彩花ちゃんは従姉妹同士なんですよ。しかもパパと彩音ちゃんも仲良かったですから結構会う感じで……まあ、幼馴染ってやつです」

「初めて聞いた……よね?柚木原さん」

「多分盗られると思ったんじゃないですか?彩花ちゃん意外と可愛い子ですし。おっぱいもふわふわFカップで可愛いですしね。……あ、「おかわいいこと……」みたいなやつじゃないですよ?ちゃーんと褒め言葉です」


 そんなことを言いながらクスクスと笑う霜月さん。どこか柚木原さんに似てるのは多分親戚故、血統的なあれなんだろう。


「んでまぁ2年前だから88のE、中3ですね。ボク生徒会長だったんですよ。彩花ちゃんの陰謀で」

「陰謀?」

「そうなんです。……あ、彩花ちゃん話します?」

「……や、良い……」

「まあ黒歴史みたいなものですもんね。そうそう、それで彩花ちゃんにボク嵌められたんですよ。あ、ハメられてはないんですけど。ほら、彩花ちゃんこの見た目で完璧美少女ごっこしてるからそりゃあもうシンパ的なのが湧くんですよ」

「……?私見たこと無いけど……?」

「えっと……中学時代厨二病拗らせてて……承認欲求を現実で解消しようとして……」

「あー……」

「んでまあ彩花ちゃんがそのまま周囲に祀り上げられる感じで生徒会長になりかけたんですよ。でも彩花ちゃんがそこでウルトラCかましてですね?詳細は省いて結論から言うとボクが生徒会長やることになっちゃったんです」

「かわいそう」

「でしょう?かわいそうなんですよボク。これは流石におっぱい一時間だけじゃ釣り合いが取れないぞということでボク彩花ちゃんと約束したんですよ。「高校では彩花ちゃんが生徒会長やる」って。それでまた詳細は省いて結論から言うともう一回ウルトラCキメられて約束が「2年ちょっかい掛けなかったら生徒会に入っても良い」までナーフされました」

「今のところ大体柚木原さんが悪いよね?」

「この間ずっと揉まれながらの交渉だったから」

「どっちも頭おかしいじゃん」


 狂人vs狂人の戦いに少し頭が痛くなってくる。「戦いは同レベルでしか発生しない」というのは基本上から目線でネット民がニチャるために使われてるのしか見たことなかったが、それが色んな意味で高レベルで行われているのを私は目の当たりにしていた。1d100。ちなみに私は「目の当たり」の「目」を「ま」と読むことについてはちゃんと納得してない。

 そして「そういえばウルトラCって?」と柚木原さんに尋ねると、彼女は「んべぇ」と舌を出し、ちょいちょいっと指差した。


「ディープキスってこと?」

「ううんレスバ」

「レスバかー……レスバ?霜月さんって普通のディベートと模擬国連の全国大会連覇してなかった?」

「あ、ボクより彩花ちゃんの方が強いですよ。世界取れます。なんでアンスレとかTwitter主戦場にしてるのか分かんないです。あ、全然関係ないんですけど最近5chの広告とかに出てくるジャージOLさんめちゃめちゃ良い乳してますよね」

「あれFANZAのR18版じゃないとそういうシーン見れないらしいよ」

「マジですか。年齢詐称待った無しですね」

「突然のえっち談義何?」

「待ってください咲楽ちゃん将来あの乳になるのにエロのこと「えっち」って呼んでるんですか?超破壊兵器ですねそれ。湾岸戦争起きますよ?」

「あの乳ってどの乳の話してるの?」

「気になる気になる」

「しょうがないから彩花ちゃんだけには教えてあげます」


 そう言って目の前でこそこそと私の胸について話す柚木原さんと霜月さん。そして霜月さんが「ゴニョゴニョ」と耳打ちを止めると柚木原さんは「マジで……?」と顔をまっかにしながら私の顔を見て、胸を見た。


「それ世界取れるじゃん……」

「SSS級の最高級ですね。ボクが保証します。咲楽ちゃんは逸物中の逸物です」

「なんで人の胸でなんでも鑑定団みたいなことしてるの?」

「何って……まさかボクの審乳眼が信用できないと?」

「そんな単語初めて聞いたよ?……っていうかさ、取り敢えず生徒会の方で話したほうが良くない?」


 そんな私の言葉に2人は木魚で三拍程の沈黙の間考えて、そして「それだ!」と思い出したかのようにこちらをビシッと指差した。忘れてたんだ。

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