（あのアップルパイはすっごく美味しい。でも、私のせいでそれが伝わらなければ悲しいし、悔しい。うーん、何か『おりゃあああーー！』っていうキャッチコピーがほしいなあ……頑張れ私ぃ！）

　今回もPOP作りに今回も気合いが入る絵里は、『何かいいアイディアが浮かぶかも！』などと考え、忘れ物を取りに行った学校帰りに図書館に出向いていた。

　が、なかなか言葉が浮かんでこない。時折キッズスペースの子供達に目を向けてホッコリしながら、絵里は再度、むうっ！　と気合いを入れる。

（あ！　いろんな言葉を並べてみよう！　何か浮かぶかも）

　思い立ったらすぐ行動！　とノートPCの画面を分割し、メモ帳に単語や短文をタカタカタカ、と入力していく絵里。

　すると。

「パパより打つの早ーい！　すごーい」

　あどけない喋り方の可愛らしい声が、絵里の耳に優しく飛び込んできた。絵里の座る椅子から数メートル程離れたキッズスペースから身を乗り出し、男の子が絵里に話しかけてきたのだ。

　絵里はにっこりと笑って答えた。

「こんにちは！　えええ、そうなのー？」

「うん！　パパもお仕事で、パソコン使ってるんだ。でもお姉ちゃんみたいにタタタターンって打てないの！　いっつもパソコンの前で腕組んで、ウーンウーン、って言ってるばっかり」

「そっかぁ」

　男の子はキラキラした目で絵里とノートPCを交互に見て、顔を紅潮させている。

　私もそんなに打つの早くないんだよ～と思いつつ、唇を尖らせている男の子を見て絵里はまたまたホッコリする。

　が。

　続く言葉に絵里は凍りついた。

「お姉ちゃんのお話は、どんななのー？　聞きたーい！」

「……………………えっ？」

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