第4話

しかし彼の店で普段使っている米は高く、自分の為になんて炊く気にならない。

そのうえ、今の無気力状態。

炊きあがりの美味しいごはん。

なぜ、ヒトは食事する事をごはんと言うのか?

そんなくだらない拘りでそれまでのパスタやピッツァから米に比重を変えた事も、客離れの一因だ。

隣村の温泉。

観葉植物が迎える。

家族が使い残した食糧は、あの米で終わり。

食堂へ。

なんでも高い。

1000円の定食。

知った顔が、その友人達と賑やかにテーブル囲むのを横目に、2人掛けのテーブルで。

うまくも、まずくもない。

ただ、ただ、何もかもが、高い。

これなら、店の良い米を納豆や卵で食べてくるべきだ。

帰り道、降り出す雨。

眠り、目覚めたまだ暗い車中。

雨は止んでいた。

フロントガラスの凍結。

外に出ると、冷たい風。

煙草に火を点け、身震いしながらケチくさく元まで。

侘びしさなんてない。

そんな余裕は、ない。

けれどもいけない。

こんなふとした隙間に忍び込む残像。

最後に家族で行った、ファミリーレストラン。

最後に妻に作った焼き飯。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

風の夜 双葉紫明 @futabasimei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る