第3話

普段村民割引で300円の入浴料は倍以上。

ガソリン代も掛かるうえ、労働時間を余計に削られる。

春から続いたわりかし大きな苦難のあと。

息も絶え絶えなところ、真綿で首を締められている様な感覚。

そして、あの気の抜けた心身の状態。

山で一歩も動けなくなる事があった。

山積みの片付けに手を付ける気力が、より鈍くなった。

もう、どうにでもなってしまえ。

けれど、一縷。

歯磨き、入浴、食事。

生活のルーティンは、明日も生きようという、必死な足掻きだと、何かで読んだ事がある。

隣村の温泉へ。

20分程の山道。

心なしか、日曜夜にしてはすれ違う車が多い気がする。

先日も別の隣村の温泉で、村の温泉で良く見る顔を見た。

その時は、炊いてあったごはんを詰めて、スーパーで半額の刺身を買って車中で食べた。

鰹、鬢長、赤烏賊、鯵。

目の前で次々半額になっていく。

ぜんぶ買っても600円くらい、小さな幸運。

分づき米。

家族が食わず、残した米。

しかし、精白米に比べて、炊飯器で保存しても、冷めても質が安定している。

2合残されたのをぜんぶ炊いて、炊きたてを少し食べた残りぜんぶ詰めてきたから、多い。

刺身があればごはんを無限に食えると思っていたが、半分はまた帰ってから食べようと風呂へ向かった。

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