第14話第十四夜
僕の人生にターニングポイントがあるとすれば…
きっと彼女を寝取られたところだと思われた。
かなりマイナス的な事象だと思われた方もいることだろう。
しかしながらあれがなければ僕は今でもあの鬱々とした空間で過ごしていたことだろう。
そこから抜け出す事が出来たのは彼ら彼女らの蛮行の御蔭と捉えることが精神衛生上健康的な思考だった。
「もう戻る気はないの?」
夜見は思わずと言わんばかりに僕に問いかけてくる。
現在僕は夜見と二人きりでリビングで過ごしていた。
昨日と言うか今日は焔と氷菓が僕のベッドに潜り込んでいたため寝不足状態だった。
と言うよりも緊張でほぼ一睡もできていない。
そんなわけで早めにベッドから這い出ると僕はリビングでテレビを眺めていた。
その音声で目を覚ましたのか夜見は僕の下へとやってくる。
そして事情を耳にした夜見は焔と氷菓に買い出しを申し付けたのだ。
そんな事があり現在僕と夜見は二人きりでリビングで過ごしている。
もちろん聖はまだ眠っているところだ。
「そうですね。もう帰る場所なんて無いですよ」
「ここがあるじゃない。いつまでもそれだけは覚えておいてね?」
「はい。ありがとうございます」
そこまでやり取りをすると僕らは少しだけ気まずいような雰囲気に包まれていた。
夜見は僕の方へとにじり寄ってきて肩を寄せてきた。
少しの緊張感を覚えながら僕は流れに身を任せようとして…。
「おはようー」
聖の呑気な挨拶が耳に飛び込んできて僕らはすぐに距離を取って離れた。
「どうしたの?ふたりとも…。もしかして…お邪魔だった?」
聖は少しだけ誂うような言葉を口にする。
僕は必死な表情で首を左右に振って応えた。
しかしながら夜見は…
「えぇ。はっきり言って邪魔」
夜見は端的にはっきりと答えるが聖は苦笑してリビングの椅子に腰掛ける。
「はいはい。そうだとしても…もうおしまい」
「ちっ。本当にいつまで経っても邪魔者ね」
「いくら憎まれ口を叩こうが…ノーダメージだから」
「ああ言えばこう言う」
「はいはい」
二人は仲よさげにやり取りをしているので僕は薄っすらと微笑んでそれを眺めていた。
穏やかな気分に包まれながら…
僕は思わずウトウトと船を漕ぎだして夜見の肩にもたれ掛かっていた。
そのまま僕は気付かずに深い眠りにつくのであった。
目が覚めた時にはソファで横になっていた。
毛布が掛けられておりリビングでは皆が仲よさげにゲームをして過ごしている。
「おはようございます」
「よく寝てたね」
「子供みたいだった」
夜見と聖はその様な言葉を微笑んで僕に投げかける。
「私のせいじゃないから」
「俺のせいだっていうのかよ」
焔と氷菓は睨み合って憎まれ口を叩き合っていた。
「どっちのせいでもないですよ。僕の問題です」
慰めの言葉でもなく事実を口にすると彼女らの適当な諍いの様なものは収まる。
「ほら。俺のせいじゃないだろ?」
「だから。私のせいでもないのよ」
二人は再び軽くにらみ合うが…
馬鹿らしくなったのか思わず苦笑していた。
「じゃあ今日も夜はまだまだ続くわよ。ゲームでもしましょう」
夜見の合図で僕らはコントローラーを握ると朝方まで遊んで過ごすのであった。
そしてまた僕らは僕らだけの特別な日常へと帰っていくのであった。
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