第13話第十三夜
不意なことで申し訳ないのだが…
僕のスマホの契約が切られてしまった。
きっと両親が何処で何をして暮らしているかもわからない僕のスマホの契約を解除したのだろう。
「そんなわけでWi-Fiが無いところではスマホが使えなくなったんです」
僕の唐突な言葉に彼女らはあっけらかんとした表情で首を傾げる。
「ん?それって不便なん?」
焔が一番最初に口を開いて…
その言葉を耳にした氷菓がうざったそうな表情を浮かべて口を挟んだ。
「外出した時とか使い勝手悪くなるって話でしょ?
街中にWi-Fiが飛んでいるわけでもあるまいし…」
「そうか?街を歩いていると勝手に繋がったりするだろ?
それを利用すれば何の不便もないさ」
氷菓の言葉に焔は適当な表情で反論の言葉を口にした。
「いやいや。でも安定して使えなくなるって報告でしょ?」
「そうなのか?これは報告か?」
焔は僕の方へと視線を向けるのでどの様に返事をすれば良いのか理解できずに適当に頷いて見せる。
「ほら。言ったでしょ?報告だって」
「そっか。俺の考えすぎだったな。それにしても聖は?」
「まだベッドで寝ているよ。
起きたら反対方面を向いて寝転がっていたから…
先に起きてきた」
僕の言葉を耳にした彼女らはウンウンと頷くと悪戯な笑みを浮かべた。
「何かあったの?あの◯乳の誘惑に負けた?」
「負けてない。何もしてないよ」
「え?一緒に寝て何も無いの…」
「何かあったら困るだろ」
「誰が困るんだ?俺や氷菓か?」
「いや…全員でしょ?」
「全員?なんで?」
どうやら彼女らとの会話はチグハグになってしまい僕らの共通認識にはある程度の齟齬があることに気付く。
「んっと…皆…倫理観バグってる?」
僕の唐突の爆弾発言に彼女らは何が可笑しいのかゲラゲラと笑い転げている。
「え?なんか変なこと言った?」
僕の続けての発言に彼女らは笑ったまま首を左右に振った。
「違う違う。ここで女性四人と同居している標が言う?
標だって倫理観普通じゃないでしょ」
「そう…かも?」
「そうだよ。私達もバグっているかもしれないけど…
標もだってこと忘れないで」
「………はい…」
そんな言葉を口にすると僕は先程の彼女らとの会話を思い出していた。
もしかすると彼女らは僕が全員と何かあっても…
どうも思わないのかもしれない。
僕は都合の良い存在として彼女らの欲を満たす相手へとなる可能性もある。
彼女らは僕という存在…
ここにいるただ一人の男性をどの様に扱うのか…
今は品定めをしているのかもしれない。
まぁ今は憶測でしか無い。
ただなんとなくそんな事を軽く想像していたのであった。
「おはよう…なんか寒かった…」
聖が鼻を啜ってリビングに顔を出してソファに横になった。
「標を抱き枕にしておいて…なんて贅沢な発言だ」
焔は苦い表情を浮かべると痛恨の一撃とでも言うような言葉を口にする。
しかしながら聖はまるでノーダメージとで言うように無視を決め込んでいた。
「寒いなら焔にでも抱きついたら?」
氷菓も冷めた視線を聖に送っている。
それでも聖は殆ど無視してソファの端に置いてあるブランケットを手にして包まった。
そのまま二度寝とでも言うように聖はリビングのソファで寝息を立てていた。
「おはよう。聖はどうしたの?」
夜見が起きてきてリビングの様子を確認して思わず口を開いた。
「さぁ。わからないです」
「なんですかね?さっぱりです」
焔と氷菓が応答すると夜見は僕に視線を向けた。
だが僕も肩を竦めて応えるだけで何も言えなかった。
本当に聖が何を思っているのか…
僕らにはわからなかったのだ。
「聖。ちゃんと答えなさいよ。どうしたの?」
夜見の言葉に聖は姿勢を正して座ると残念そうに肩を落として口を開く。
「私の◯乳を背中に押し付けまくったのに…
標はまるで誘いに乗っからない…
私って女性としての色気がない…?」
聖の悩みを耳にした焔と氷菓は嘆息するように息を吐いた。
夜見だけは何故かウンウンと頷いて同意するような表情を浮かべている。
「心配になっても可笑しくないわ。
標はまるで何もしてこないから。
そんな様子すら見せてこないから。
一緒に寝ると逆に不安になるまである。
聖の気持ちは分かるわ…」
「夜見もそうだったのね…なんだか少しだけ寂しいわ…」
二人の表情を目にして僕は項垂れるようにして息を吐く。
「なにかして良いんだったら…先に言ってくださいよ」
僕の甘えから来る言葉を耳にした彼女らは少しだけピキリながら口を開いた。
「雰囲気で察しなさい」
「ってか何であれで我慢できるの?」
夜見と聖にそんな叱責のような言葉を受けて僕は再び項垂れる。
「いつもはどう処理してるん?」
「私も興味ある」
焔と氷菓に突っ込んだ質問を受けて僕は頭を振った。
「起きて早々にこんな話やめましょうよ…」
僕の逃げから来る言葉に彼女らは一歩も引かない姿勢を取っていた。
「逃げないでちゃんと答えて!」
彼女らの詰問は夜から朝方までいつまでも続いたのであった。
そしてやっと話が落ち着くと…
僕らは本日は各々の部屋で眠ることを決めた…
のだが…
現在僕のベッドの両脇には焔と氷菓の姿があり…
僕は本日も寝不足になることが決定したのであった。
いざ、次の夜へ!
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