第18話 炎籠
無事第一関門の入り口を突破し順調に昇っていた2人だったが、落下物で塞がれていたり、炎で溶け落ちてしまっていたりで不必要に体力を使ってしまったクレアは既に息が上がっていた。
「ごめんギルダン、先に行って」
「はぁ……、君を置いて行けるわけないだろ」
ギルダンの使命はクレアを守ること。
これはクレアの実母サンタナとの約束であり、クレアやホーヴィルの使命と同様である。
当然クレアを見捨てることはなく、一気に頂点の100階に辿り着く方法を考える。
発電塔を昇る方法は階段とエレベーターの2つだが、クレアを担いで階段を昇っては、頂点にいるかもしれない残された
となると、残された選択肢はエレベーターだが、エレベーターが偶然30階に止まっているという豪運を引き当てられるほど2人はラッキーマンではない。
突破口を見つけるべくエレベーターの扉を力ずくで開け空洞を覗くと、遥か上階にエレベーターが止まっていた。
『あのエレベーターを上手く利用すれば上階まで一気に上がれるが、リスキーすぎるか』
エレベーターの位置から上階まで一気に昇る方法を思いついたギルダンだが、クレアを背負って行うにはリスクが高いようだ。
しかし、リスクを考えている暇もない状況のため、ギルダンは自身の無謀な作戦にかけることにした。
「クレア、簡易装備のカラビナを俺の装備に引っ掛けてくれ」
「わかったわ」
呼吸を浅くして酸素を使い切らない努力をしながら体力回復に努めていたクレアは、ギルダンの呼びかけに素早く反応し、腰につけていたカラビナを指示通り接続する。
準備完了後、2人はエレベーター付近まで近づき、それぞれ息を整える。
「いいかクレア、今から反対側にあるメインロープに飛び移る」
「嘘でしょ!? カラビナで接続した状態で?」
「俺がクレアを負ぶって飛ぶから安心しろ」
「……わかったわ、怖がっていても埒が明かない状況だしね」
「じゃぁ、早速俺の背中に乗ってくれ」
炎の熱で次第にフロアが熱くなり、靴も限界に達していた。
クレアは思い切りギルダンの大きな背中に飛び乗り、首に手を回して強くしがみつく。
5歩ほど下がりながら極厚軍手を装着したギルダンは、残りの酸素を吸わんばかりの大きな深呼吸をし、エレベーターに向って駆け出す。
走り出したその3歩目、右足の母指球で地面を掴むように蹴りだし、2人の身体はロープに目掛け宙を舞った。
熱も通さないような極厚の軍手でロープを掴んだギルダンは、勢いのあまり身体が振り回され、当然クレアも大きく体が降られるが何とか上昇作戦の第一関門を突破。
ロープを強く握り、持ち前の超体幹で体の揺れを抑えたギルダンは、間髪入れずに第二関門に挑む。
腰の銃ホルダーからハンドガンを取り出し、足もと付近のロープを狙い打ち始めた。
「ちょっと、ギルダンこれって」
「あぁ、ロープを切って、エレベーター本体の重さで上に急上昇する。舌噛まないように口を閉じてろよ」
「……」
ギルダンの忠告に急いで口を閉じたクレアは、宙に浮く足をギルダンの身体に絡め、準備OKのようだ。
1発、2発と発砲し少しずつ解けていくメインロープはミシミシと音を出し、緊張感を嵩増しする。
そして3発目、残る部分を見事に捉え、切れたことを認識したときには既に身体は超特急で上昇していた。
急行下するエレベーターは視界を1秒で駆け抜け、気が付けば最上階付近まで昇っていた。
ギルダンはタイミングを見計らい、メインロープから手を放して壁の出っ張りに着地する。
さらにホルダーから銃を取り出して、乗場ドアを内側から開けられる予備ボタンを狙い打ち、開いたドアに向って飛び移る。
こうして見事100階の雷供給部分に辿り着いたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます