第12話 上から見てて

――――――飛ぶのを止められた日の翌朝。


「信愛……信愛……」

「居る。ちゃんとここ居る。」


起きがけに信愛が居ないことが不安だった。

こうやって信愛に包まれる毎日がどこかに行ってしまった喪失感もあった。


僕が選んだ事に背中を押してくれていた。

だからあえて突き放そうとした。


「信愛…どこ…」

「ここにおる。ほら、な?」


信愛は僕と目線を合わせて頬に僕の手を導いてくれた。


僕がそれを見て微笑むとまた抱きしめてくれた。


唯一無二の暖かさ。匂い。

この人がいれば何も要らないと思った。


「信愛…」

「うん?」

「だいすき」

「私も。おんなじ。」

「嫌いじゃないん?」

「そんなわけない」


僕がまた感情の行き先がわからなくて自分の手で

首の後ろに爪を立てていると、信愛に優しく降ろされた。


そして…キスされた。


「よう聞き。いい?」

「うん」

「あたしは、ずっとあんたとるよな?2人で望んで大人になっても一緒に居るよな?」

「うん」

「あんたを離したい気持ちはあった。正直な。鬱陶しいとか、邪魔とかじゃない。ほんまにあんたのためにって。真凜の事もあるしな。あんた、あの子以外深い子作らんかったのも知ってる。やからあたしはあんたを突き放した。…でもめちゃくちゃしんどかった。あたしの方が寂しすぎて気狂いそうやった…。やからもう二度とあんたを離したくない。」


信愛は僕の目を見て真っ直ぐにそう伝えてくれた。


僕はその真っ直ぐな信愛にキスした。

すると、信愛は僕を下にして、微笑みながら耳に髪をかけた。


僕がそこに手を伸ばして触れると、


「あたしとおって、不安な事あるならちゃんと教えて。」と言ってきた。


僕は少し黙った後答えた。


「……信愛の前では強くなれん。信愛を守れんかもしれん。ずっとこうやっと信愛に上から見てて欲しいから。信愛まで他のやつらと一緒ならもうどうでもいい。1人で生きてく。」


「あたしらはなんも変わらん。あたしが歳上なのも変わらん。でもほとんど同じ目線で来てたつもり。あんたが守ってくれてることも沢山ある。そこに不満は無い。あるとしたらあたし以外に行くこと。今回でよくわかった。あたしは耐えれん。」



―――――――――――――――。


気持ちよさ


よりも



愛情が凄く伝わってきた



だから僕も



沢山伝えた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る