第4話 どいつもこいつも

信愛は夜寝る前に必ず僕とベットで話す。

今日見たものとか、感じた物とか、お互いに。


でも大概僕が信愛の声を聞きながら包まれて寝てしまう。


それに気付いた夜中に『ごめんね』って言いながら夜風を浴びにベランダに出る。


そのまま椅子に座って空を見てると

たまに信愛が来る。



「どした?寝れない?」

「目覚めた。ごめん。起こして」

「あんたおらんかったから。」

「ごめん。」

「居場所は分かるから大丈夫。」

「……」

「どうしたん。」


信愛も横に座って僕の答えを待つ。


「なんでもない。部屋戻ろか。」

「言ってや。」

「怒んなや」

「怒るわ。むしろこんな夜中にイラつかせんな。」


信愛が足を組んで頬杖をつきながら貧乏ゆすりして僕を見る。


「…信愛。聞いていい?」

「なに。」

「…信愛はさ、ちゃんと俺だけ見てくれる?」

「ちゃんと見てる」


「そうだね。」


僕は空気みたいに答えて立ち上がった後、横に座る信愛の首に手をかけた。



そして少しづつ圧を加えて…

「どいつもこいつも一緒だな…。死ねばいいのに。」


そう呟いてさらに圧をかけると信愛の顔が苦しみの顔に変わっていった。


「…綺麗だな。」


僕はそのまま信愛にキスして続けた。


「…勘違いだったみたいだな。『お前だけは違う』って思ったのに。お前もそこらんのやつらと一緒。…嬉しいだろ。幸せだろ?…あぁ?どうなんだよ。」


信愛は瞬きもせず僕を見ていた。

抵抗する素振りもなかった。



――――――――――――そのまま家を出た。


何度も何度も信愛から着信があった。LINEも入ってた。でも全部無視していた。もう関わりたくもなかった。

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