第2話 ありのまま

「……。」

「なに?なんか付いてる?」

「え?…いや、なんも??」


朝食を2人で食べている時に僕がぼーっと信愛を見てるとそう聞かれて、我に返された。


「なに。ずっと見てたけど。」

「いいじゃん。減らねーだろ。」


「肌の水分吸われてカサカサになるわ。」

「え?そんなことある?」

「…アホやな。」


驚く僕を見て信愛は微笑む。


彼女は普段ツンと澄ましているが、

鎧を脱いで気の置ける人といる時は方言が出る。僕らは元々関西方面の出身。


今は全く違う地方で生きてる。だから、多方面の人には変な圧をかけないようにこっそり生きてる。

そんな感じ。


でも、鎧を脱ぐと【自由】になる。




「信愛」

「なに?」

「…ここ。」


信愛の口についた卵を取って食べた。


「美味しい?」

「直接行っちゃっていい?」


「そう来る?」

「今行く」

「待て。」


信愛に手で制止されてそれ以上は出来なかった。


「あーくそっ!」

「はよ飯くえ」


綺麗な顔してそんな事をつらっと言う。



「あーでた。おかん出た。」

「なんでもええ。片付かん」

「はーい…。」


信愛は口に箸を運びながらまた僕を見て笑う。


大人になって、色んな人と色んな事があって思った。


《強くて優しくて厳しくて、でも、ちゃんと愛してくれる人がいい》と。


それはやはり今まで目を閉じてきた信愛だった。

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