第11話 モデルルームみたいな家

そのあと、いもうとからの連絡は取れなくなった。

電話しても出ない。

メールの返事も来なかった。


多分、私が言った言葉に怒ったのだろう。

実家からの情報では、小さな子供がふたり

マンション出入り口の階段に毎日、座っていると通報されたそうだ。

義弟はそんな事になっている事を知り、自分の母親に子供達を頼んだ。


さすがの義弟のお母さんも呆れ果てて、

面倒を見てくれることになった。

義弟のお母さんはその頃体調を崩していたので

孫の面倒が負担だったらしいが、孫がそんな目にあっているとわかり引き受けてくれたのだ。


いもうとは不倫をしていた。

パート先の家庭のある男性と。

義弟も浮気をしていた。

義弟はそこでご飯を食べさせてもらっていた。


子供達は中学生と小学生の高学年になっていた。

いもうと夫婦には暗黙のルールが出来上がっていた。

朝は義弟はいもうとより先に起きて家を出ること。

帰りはいもうとが入浴を済ませて、自分の部屋に入るまでは義弟は帰らない。

姪は義弟から電話が入ると、

「まだ、お母さん自分の部屋に行ってないから帰っちゃダメだよ、お父さん。」


「さっき、お母さん、自分の部屋に入ったよ、

帰ってもいいよ。」

小学生の子供がそんな役割をしていた。


甥の方と言えば、ヤンキーグループに入り

夜遊び、万引き、シンナーに溺れていた。

学校にも行ったり行かなかったり。

当然、学校からの呼び出しも警察からの

連絡も多くなってきた。

こんな時、いもうとは悲劇のヒロインになり

大袈裟に泣く。

「どうして、こんな事をしたの?

ママは万引きなんて1番嫌いなのよ。」


「あのさ、かあさんがくれたブランドのデカいカバンあったじゃん。

あれさ、万引きに使いやすかったんだよな。

棚の端からこうさ、ザーッとカバンに落としてくんだ。面白かった!」

いもうとは、ショックを受けたらしいが

この時から甥を見捨てた。


いもうとはパート時間を伸ばしていった。

新しい店舗の立ち上げに二週間も家を開けたり

していた。


父親も母親も兄もいない、立派なチリ一つないマンション。

そこで、姪はひとりだった。

姪は寂しかったんだろう。

男性に愛を求めた。






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