感情に花

 動物感情は次第に消滅して、人は全て社会感情によって行動するに至る。

 社会感情とは恐らく理性を言うものらしい。そして動物感情とは、嫉妬や愛情などの超理性的な感情を言うのである。

 俺は軽率に否定することも差控えるが、そうだったとしても軽率に賛同することもなりがたい。人を美醜によって判断せずに、才能によって判断するということは、所詮同じことではないか。標準が美醜から才能へ変ったところで、五十歩百歩のことである。そこから動物感情の消滅する理由は見出しがたい。同時に動物感情の消滅が人生を豊富にするかどうかを、俺は今判じがたい。しかし俺は、俺自身を実験台上へのせて、一人の人間を俺の中から出発させ、このことを考えてみようという気持ちになっている。所詮文学に解決はない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る