棒キレ

 人間と言うものは、自分でも何をしでかすか分らない、自分とは何物だか、それもとても知りやしない、人間はせつないものだ、でも、とにかく生きようとする、何とか手探りでも何かましな物を探く縋りついて生きようという、切羽詰まれば全く何をやらかすか、自分ながらたよりない。疑りもする、信じもする、信じようとし思いこもうとし、体当り、遁走、まったく悪戦苦闘である。こんなにして、なぜ生きるんだ。文学とか哲学とか宗教とか、諸々の思想というものがそこから生れて育ってきたのだ。それはすべて生きるためのものなのだ。生きることにはあらゆる矛盾があり、不可決、不可解、とても先が知れないからの悪戦苦闘の武器だかオモチャだか、ともかくそこで振り回さずにいられなくなった棒キレみたいなものの一つが文学だと思う。

 人間は何をやりだすか分らんから、文学があるのではないか。歴史の必然などという、人間の必然、そんなもので割り切れたり、鑑賞に堪えたりできるものなら、文学などの必要はないのだ。

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