6-(3/7)国内七大論戦


(備考)

エッセイ書くの楽しかったですが、そちらも死ぬほどストック発生して満足したので来週から論戦たくさん書くかもしれません。

どちらも、投稿している十倍くらいのストックを基に人様へお出し出来るか一応悩みつつ、氷山の一角を投稿してます。

(以下、本文)

 

 御劔ミツルギの過去、僕の立ち位置、衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフや大きな論戦ろんせんに勝利した者の顛末てんまつを改めて確認する。

 僕のことを守りたい、理由は長くなる、そう告げた御劔ミツルギの意を汲みつつ動機や身の上話は後回しにしたのが昨夜のやり取り。そこから僕も一晩、真剣に悩んで答えを出す。


「俺は、君や半田ハンダには静かに……穏やかに生きて欲しかった」

「人から〝甘い〟って言われないか? 御劔ミツルギ、試合中とは別人だな」


 御劔ミツルギはかつて三人兄弟の長男であり、論災孤児ろんさいこじだった。


 今となっては国際条約で禁止された暴虐殺戮論戦ジェノサイド・ワーウルフ……その開催地区として若き御劔ミツルギの暮らす市が選定され、巻き込まれた結果として弟を二人亡くしたらしい。


「なら、せめて困ったら連絡をくれ。俺に直接でなくても構わない」

「ありがとう、でも……僕は自分の意思で生きる。やれるだけやってみたい」


 途中退場した半田ハンダ、そして僕は御劔ミツルギの弟達が生きていたら同世代にあたる年齢。

 それでなくとも論戦の勝者は新たな闇に搾取されたり、自分を見失うケースが後を絶たない。栄光から転落した者の末路を知る御劔ミツルギは、僕の存在や人生を気にかけてくれた。



「案そのものは、悪くない。中継と動画、どっちで伝えるかは決めてあるのか?」

「それを悩んでた。そうだな……せっかくだから御劔ミツルギが撮ってくれよ。ついでに、投稿も甘えていいか?」


 早乙女サオトメが遺した呪詛の言葉は紛うことなき正論であり、僕の胸へとくさびのように深く打ち込まれている。

 

 自分達が享受する制度も環境も強く自覚せず、流されるままに生きる腑抜けた小市民、それが僕だ。

 

 だからこそ、もう迷わない。手から放つダーツでどの数字を狙うか悩むことがあっても、目的とするマトに当たらない未来があるとしても、矢を掴み投げるか投げないかだけは自分で決める。

 

 生き方をおのれで選び、自由猶予モラトリアムも僕自身の手で生み出す。

 

 最終日が終わった夜に衛星内で文字のみという形で通知された論戦首脳会談の決定が僕にとって好都合だった、という部分も大きい。



 衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフの会場となった会議室に一度戻った御劔ミツルギが、地球でも使用していた端末を構える。


「この動画を見る奴、衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフの仕様変更はもう当然……知ってるよな?」


 声が震えないよう努めながら、御劔ミツルギの端末に向かって僕は喋る。


「次回の衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフに参加するには、国内七大論戦セブンス・ワーウルフの制覇経験が必須になる。僕は、それに挑む」


 運営とはまた別な、熱量の高い観戦層。論戦を興行として便乗しながら可能な限りの利益を掠め取る論戦首脳会談と呼ばれる団体が、今回の衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフに苦言を呈したのである。


「いくらなんでも突然死の発生は、質が低い……とのことだ。まあ僕も分からなくはない、そして防ぐための制度が生まれた」


 国家も企業も〝運営〟に逆らえない現代で、予選までの形式は対応国家に一任されている。それを論戦首脳会談は組み換えたのだ。


「僕は地球に戻ってから、国内七大論戦セブンス・ワーウルフを攻略していく。まずはそこまでが前提だ」


 動画の撮影は、続く。

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