生還者は惑星へ還り、新たな道を征く

6-(1/7)狼側の推理


(備考)

・反省会、今回までです。

・次の話も一気に更新しました。

・今回ストーリー1ミリも進みません。

・要るか悩みつつ投稿した回なので、この回を飛ばしても良いのでは説あります。

(以下、本文)

 

 長い時間をかけ、ようやく狼達がとった方針の全容が解明されつつある。

 三人でチャットの記録ログを繰り返し眺め、御劔ミツルギによる解説は続く。


 前提として、王賀オーガおのれの〝推理〟に自信があった。つまり白戸シロト警備セキュリティである可能性を高く見積もっていたようだ。

 

「だが、このチャットで記録されているように王賀オーガは多くのパターンを想定していた」

「へえ、アイツやるじゃん」

「狼も狼なりに、思考の積み重ねを信じ貫いたのか」


 警備セキュリティの候補として捉えた白戸シロトを襲撃するしかないという案に〝三人目〟つまり早乙女サオトメが珍しく、質問を送信する場面を僕は見落としていた。記録ログさかのぼる。


白戸シロトへの襲撃が防がれたら?』

『その場合は明日、七人盤面ばんめんが勝負所だ。警備セキュリティかたるか騙らぬか、吾輩わがはいが出るべきか、意見があれば言え』


 ⑧→⑥→④

 八名の日に関西カンサイが処刑され、夜間に一名が襲撃を受けるのが本来の流れ。


 ⑧→⑦→⑤→③

 襲撃先の白戸シロトが生存すれば処刑の回数が一つ増え、しかも警備セキュリティが名乗りを上げれば狼にとって苦しい状況。


 早乙女サオトメ王賀オーガの思惑、勝負所という言葉の意味、チャット記録ログから方向性が見えてくる。


『安定を取ってグレーを狙うより、確白カクシロを狙った方がいいのは理解した』

『そうだ。吾輩の読みが当たり確白の白戸シロト警備セキュリティだったという上振れが起きれば、一番強い』


 八名の四日目も、翌日が七名ないし六名でも灰幅グレースケールは変わらず六である。

 確定黒の関西カンサイ、確定白の白戸シロト、それ以外の六名。

 白戸シロトが襲撃されても生存しても、白戸シロト以外の六名がグレー


 護衛される可能性が高い白戸シロトへの襲撃を避け〝グレー〟を狙い、その位置が警備セキュリティではなかったという最悪のケースを王賀オーガは警戒していたらしい。

 御劔ミツルギが紙に記していくパターン表の量が次第に増えていき、メモを眺めながらいつしか僕と管木スガキも〝狼〟の目線で悩みはじめていた。


「進行にも襲撃すじにも明確な〝正解〟はない」

「パンクしそうになってきたぁ、やっぱもうやめなーい?」

御劔ミツルギのメモはまるで、パズルだな」


 カンサイシロトグレーグレーグレーグレーグレーグレーの八名からカンサイ処刑。

 確白と六グレー、という部分までが不変の状況。


 確白が警備セキュリティだった場合とそうではない場合、どちらも白戸シロトを襲撃せずにグレー襲撃を通したなら総数が六名になる。

 

 シロトグレーグレーグレーグレーグレーが〝人間目線〟で可視化された範囲。

 カクシロニンゲンニンゲンニンゲンオオカミオオカミが実際の内訳うちわけ


 白戸シロト以外の位置から警備セキュリティが現れたらグレーは四、狼もかたるのならグレーは三、残りの処刑回数も見ながら書き出し整理する。

 

 警備セキュリティが複数出現したケースの真偽しんぎは脇に置く。


 ○、警、△、△、警、△という人間目線。

 ○、しん警、△、△、ニセ警、オオカミという狼の視野。


 この「確白も灰警備セキュリティも両生存」こそが、王賀オーガの危惧した最悪のパターンである。


「灰の数が減れば、狼が処刑される可能性が高まる」

「ならやっぱ、白戸シロト警備セキュリティの可能性に賭けるの分かるかもぉ」

「灰の終狼ラストウルフも三択で処刑されかねないし、警備セキュリティを襲えば生き残った警備セキュリティ騙り狼も処刑、かと言って警備セキュリティ以外を襲って防がれたら詰むことになるな」


 護衛成功の報が出た時点で、そして突然死による遺体だとしても白戸シロトが死んでいることから僕は「白戸シロト警備セキュリティではない」と判断した。聞いてみると、御劔ミツルギ菅木スガキも同じように考えたらしい。


 しかし、王賀オーガは違った。


 あくまで白戸シロト警備セキュリティという推理結果に固執し、突然死と通知の処理関係や仕様理解、多くの状況を見据える強さと策に溺れ自説が正着と決め打ってしまった。


 そして満を持して警備セキュリティという役職を乗っ取り、勝負を決めにきた所で蝶野チョーノに敗れる末路を迎えることを僕達は知っている。

 再び狼の記録ログに目を向けるとタイムスタンプの時刻が飛び、早乙女サオトメが一言だけ返信をするチャットが目に留まった。


『お好きにどうぞ。襲撃先、白戸シロトに設定済み』


 初日や序盤のうちに見落としていた記録ログがないか改めて確認し、王賀オーガ関西カンサイが交わす身の上話も精査した僕は、直視できなかった早乙女サオトメの心情を読み受け止め、個人識別板パーソナル・カードを閉じた。


 会場となった人工衛星が独立推進ユニットを使い、軌道エレベーターに向かっている。


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