5-(5/7)殺戮者の闇夜


 狼のチャット記録ログ、その閲覧を開始する。タイムスタンプから察するに、まずは初日の顔合わせである。

 

『よろしく。こっちでも隠すか、ここでは明かすか、どうする?』

『どういう意味だ』

『互いに誰が狼か名乗なのっておくか、この場でも正体が分からないまま進めるか、ってこと』


『そうそう。〝三人目〟のそれな』

『なるほどな、吾輩わがはいはどちらでも構わん』

『もう〝二人目〟は誰が分かった。自分は名乗らないでおく。三狼さんろうが生きてるうちは襲撃先も二人が決めたら承認されるから、好きにすればいい』


王賀オーガさんだったか、分かりやすいなぁ。オレは関西カンサイや、あらためてよろしゅうな』

『昼間に調査サーチかたった二人、どちらかと思えば貴様だったか』


『せやせや。で、どうする? 二日目からかこって欲しいとか特攻とっこうして欲しいとかある? 合わせるで』

『三人目、貴様はどう思う?』


 全員の発言がなくなり、次に関西カンサイが怒りをあらわにしながら書き込んだ内容。そのタイムスタンプは顔合わせのおよそ一時間後、夕刻だった。


『なんやねん三人目、ありえへんやろ初日やぞ? オレがクロって身内みうちりなったらどうするんや、顔出せや、名乗らんかいクソボケが』

『色々な奴がいる、仕方あるまい。関西カンサイ、貴様は半田ハンダに特攻してくれ』


 身内切り。

 調査サーチかたる狼が〝仲間の狼〟に調査結果サーチ・リザルトの黒判定を告知する行為を指す。

 騙り狼か被黒ひくろ狼のどちらか、あるいは両方が処刑される懸念リスクが高い奇策の一種である。特定の条件下では狼陣営全体に対して有利に作用するが、関西カンサイの言うように「たまたま黒を打った先が仲間だった」は事故でしかない。


半田ハンダってキミんとこの社員やろ? ええんか? まあ、君が言うならええか。襲撃先は?』

軽曽根カルソネだ』


『アカンて。確定襲撃したらオレ処刑されるやん。それに防がれたら終わりやぞ?』

『なら、解析アナライズで構わん。初日の信用差なら軽曽根カルソネへの襲撃は通ったと思うがな』


『ほな解析アナライズで。オレも調査サーチ騙った以上は死ぬつもりでおるけど、確定襲撃からの即処刑はあんまりやん?』

『確かにな。吾輩もそろそろ休む、貴様が半田ハンダに黒特攻してからの動きで注文があるなら書いておけ。なければ吾輩は半田ハンダを切る方向で動く』


 二日目とおぼしき内容まで読み進めても三人目、つまり早乙女サオトメによる書き込みは少ししか見られなかった。


『処刑できひんかったなぁ、パンダくん。で、騙りの結果と襲撃はどうする?』

『まず、明日の朝に〝三人目〟か吾輩のどちらかが調査サーチされていなければ……つまり軽曽根カルソネが三日目に片白カタシロを出しているようなら、関西カンサイはそこにかぶせる形で確定白を作って欲しい』

『生存報告。騙り結果も襲撃先もどこでも可。おやすみ』


『確白かぁ、狙いは? 今日の襲撃先次第やけど、苦しゅうなるかもしれんで?』

『狙いは、信用勝負だ。それか軽曽根カルソネへの襲撃を見据みすえるか、吾輩に少し検討させて欲しい。〝三人目〟は書き込みが来たと思ったら即閉じか……何を考えているのだ』


『まあ確かに被せて後出しの確白ならオレの信用上がるかもしれんな。ええで。なら襲撃は解析アナライズか?』

『そうだ。初日を防いだ警備セキュリティも、まさか二連で狙うようなバカバカしい襲撃すじとは思うまい。にしても……〝三人目〟の協調性の無さはどうにかならんのか』



 狼達の会話は、続く。

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