5-(3/7)第三の根拠


『私はやっぱり、深川フカガワさんと御劔ミツルギさんは信じたいです。序盤から一緒にいたし……昨日も王賀オーガさんを処刑したわけですから』


 これが、早乙女サオトメ失言エラー


「初日から頻繁ひんぱんしゃべった、それだけの理由で僕や御劔ミツルギを信頼する担保にするのは……おかしいだろう」


 行動を共にしていた半田ハンダ王賀オーガに切られ、五日目まで一緒に動いていた王賀オーガ蝶野チョーノも対立した。

 接触時間や関係性が信頼を保証するものではないことくらい、誰でも分かる。


「あー、そっか……それもある種の視点漏れよね」

「だろうな。早乙女サオトメは私と深川フカガワの〝シロ〟がえている上で、懐柔かいじゅうしようとする結論ありきで強引に理由を肉付けした……という話か」

「そんなところだ。僕からも聞きたい、菅木スガキは投票の段階でどうして……気付けた?」


 早乙女サオトメ深川フカガワ

 菅木スガキ深川フカガワ

 御劔ミツルギ早乙女サオトメ

 深川フカガワ早乙女サオトメ


 最初の処刑投票、フタを開ければこのような内訳になる。


「私ざぁこだったなぁ、ごめんね深川フカガワお兄ちゃんに投票しちゃってて。ま、ちゃんと気付いたから許して」


 この時に菅木スガキの目線で二つの事実が確定した。

 一つは誰かが自分と共に〝深川フカガワ〟へ投票したこと。

 もう一つは誰か二人が〝深川フカガワではない者〟に投票したことがわかる。


 ①管木スガキの目線で深川フカガワが狼だった場合。

 事前申告の段階で僕は投票先を明言しなかったが、御劔ミツルギ早乙女サオトメの意思は固いように見えた。

 何より、二人が正直に発言する〝人間〟なら、そして六日目の様子をかんがみれば予告の通りに投票しないことは考え辛い。

 

 菅木スガキ深川フカガワ

 早乙女サオトメ菅木スガキ

 御劔ミツルギ早乙女サオトメ

 深川フカガワ→?


 深川ぼくが狼なら、この形に帰着きちゃくするのが自然だ。

 そして、この仮説を前提とするなら〝深川フカガワ〟が狼だった場合どこに投票しようと再投票が発生しないはずである。


「だから、ざぁこな私でも深川フカガワお兄ちゃんはシロだって分かるわけ」


 ②御劔ミツルギが狼だった場合。

 狼は人間を殺さなければならない。人間の票を誘導するか、自らが人間の票に合わせる必要がある。

 御劔ミツルギクロの目線で三人の〝人間〟の挙動は、深川ぼくが最も読み辛く菅木スガキに関しても投票先の二択が不明瞭ふめいりょうだった。

 

 ならば、早乙女サオトメ便乗びんじょうした投票を行うと菅木スガキは予想。

 

 早乙女サオトメ菅木スガキ

 御劔ミツルギ菅木スガキ

 菅木スガキ深川フカガワ

 深川フカガワ→?


 この仮説は破綻はたんしている。

 何故なぜなら、僕が僕自身に投票することは不可能だからである。


「みんなが意見、手のひらくるっくるしてたらアウトだったけどねー。でも、私には誰かが深川フカガワお兄ちゃんを殺そうとしてる、って分かったから。なら早乙女サオトメお姉ちゃんかなーって」


 こうして僕達は衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフに勝利し、三つの報酬資格から二つを選択することになる。

 

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