棺は宙に揺られ、冷たい亡骸を運ぶ

5-(1/7)論戦の終焉


 六日目、総数は四名、僕以外の三名は投票先を宣言し私室に戻った。


 御劔ミツルギ早乙女サオトメ

 菅木スガキ深川フカガワもしくは御劔ミツルギ

 早乙女サオトメ菅木スガキ


 言うまでもなく三名のうち一人が狼で、投票の予告そのものが嘘である可能性も否めない。


 発言や行動を振り返り、最後まで考えなければ。


『異議あり。私は、ラストウルフを早乙女サオトメと予想している』


 御劔ミツルギの発言。

 彼だけは、間違いなく人間だろう。

 序盤や中盤にかけての動きから、御劔ミツルギは僕と早乙女サオトメを抱きこめたはずだ。その早乙女サオトメに投票を宣言し、その上で時間をかけ菅木スガキシロを主張するのは狼ならあまりにも合理を欠いている。


 御劔ミツルギが〝菅木スガキかばう〟ことが、おかしい。


 彼が狼なら早乙女サオトメ菅木スガキも人間であり、女性二人の発言は本心ということになる。

 菅木スガキ深川フカガワ御劔ミツルギに投票

 早乙女サオトメ菅木スガキに投票

 これがほぼ確定している以上、御劔ミツルギが狼なら彼の持つ一票を菅木スガキに投じることで目的は達成される。

 

 より盤石な状態を狙うなら、なすべきことは二通り。

 ①僕の票を早乙女サオトメ菅木スガキ、特に菅木スガキへ誘導。

 ②菅木スガキが僕を怪しむように不審点を列挙。


 ①が決まれば菅木スガキに三票入ることになり、②もまた菅木スガキに二票と深川フカガワへ二票が見込める動きとなる。

 あるいは最優先で「菅木スガキ御劔ミツルギの疑念解消」を行えば、菅木スガキが持つ票をぶらすことで御劔ミツルギは処刑をまぬがれるはずだ。


菅木スガキはその時々で終盤を見据みすえた展開を意識し、悩み、結論を下した。管木スガキの動き方は推理者すいりしゃ由来ゆらいのものだ』


 御劔ミツルギのこの言葉は、菅木スガキに対する説得や弁明というよりも僕に向けた訴求の言葉である。

 彼が狼なら、早乙女サオトメを黒視して菅木スガキの白さを解説するようなゲームメイクはおかしい。


 僕はまず、御劔ミツルギの〝人間〟をった。


『私はやっぱり、深川フカガワさんと御劔ミツルギさんは信じたいです。序盤から一緒にいたし……昨日も王賀オーガさんを処刑したわけですから』

関西カンサイ王賀オーガ早乙女サオトメお姉ちゃんの三狼さんろう構成ならさ、ざぁこな早乙女サオトメお姉ちゃん処刑されるじゃん昨日。王賀オーガ警備セキュリティかたるって提案しても「やめて〜」って言うんじゃない?』


 早乙女サオトメの主張、菅木スガキの主張、どちらも一見すると筋が通っているように思える。

 しかし、御劔ミツルギが人間なら残る二人の一方が狼。本心を隠している場合もある。


 人間である以上、何か違和感や綻びがあるはずだ。


 初日からの会話、行動、議論、全てを思い出し、考え……僕は辿り着いた。


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