4-(7/7)四灰、一狼


 十五名が参加していた衛星墜落論戦。

 

 ⑮→⑫→⑩→⑧→⑥→④

 

 突然死が発生したせいで処刑回数が一日分少ない、六日目となる四人の最終日。


「殴って様子見たけど、分かんないねこれ」


 管木がぽつりと呟いた。

 物理的に手を出すではなく言葉によって揺さぶりをかける行為を〝殴る〟と言う。


「私が一人置くなら、やっぱり最終的に早乙女お姉ちゃんかな。だから、御劔お兄ちゃんか深川お兄ちゃんで悩むつもり」


 彼女が口にした〝置く〟という表現。

 これは対象を暫定的に人間と見做す行為を指し、旧時代の人狼ゲームでは村人扱いということで村置きとも呼ばれた。


「関西、王賀、早乙女お姉ちゃんの三狼構成ならさ、ざぁこな早乙女お姉ちゃん処刑されるじゃん昨日。王賀が警備を騙るって提案しても「やめて〜」って言わない?」


 王賀が役を騙り、灰を削ることになれば早乙女が処刑されかねない。

 事実、王賀も……そして蝶野さえも昨日は早乙女に投票しようとしていた。

 

 それを根拠に菅木は早乙女のシロを主張。


「私はやっぱり、深川さんと御劔さんは信じたいです。序盤から一緒にいたし……昨日も王賀さんを処刑したわけですから」


 早乙女は王賀の処刑に至るまでの経緯を根拠に、僕と御劔を村置き。


「それに菅木さんは、色々と理由をつけて半田さん処刑に誘導してましたよね? もっと言うなら、鴨山さんの時だって……」


 関西・王賀・Xの構成が確定した今、解析が死亡したことで色が分からなかった鴨山も、突然死した者も全員が人間ということになる。

 そこから菅木が無辜の人間陣営に対する処刑に強く関与したとし、早乙女は菅木のクロを主張。


「異議あり。私は、ラストウルフを早乙女と予想している」


 ここにきて、御劔が早乙女を黒視。


「白要素、白視、これはもはやキリが無い。そして早乙女が菅木に向ける言葉は要素に基づいた殴りではなく、結果論を軸とした黒塗りだ」


 菅木が〝鴨山と半田を推した〟それを根拠に菅木の狼説を唱える早乙女に対し、御劔が異議を叩きつける。


「確かに鴨山も半田も人間だった。しかし、菅木はその時々で終盤を見据えた展開を意識し、悩み、結論を下した。管木の動き方は推理者由来のものだ」


 三人ないし四人で迎える最終日は、投票形式が通常と異なる。

 各々が私室に戻り扉がロックされ、そのから個人識別板を用いた投票と処刑が行われるのである。


「時間、だな……これを言うのは悪手かもしれないが、僕は三択をまだ決めかねている。人間陣営の二人は、最後まで考えてくれ」

「うわぁ、深川お兄ちゃんよわよわぁ、ざっこぉ。でも、素直な感じはちょっと白いかも」

「私は菅木さん投票から多分、変えません。御劔さんが考え直してくれなくても、深川さんは私を信じて下さい」

「再考の余地があるかもしれん。だが……クソ、時間が足りん」


 時刻は十九時、五十五分。

 二十時までに私室へ戻り一人きりの戦いと熟考を重ねた末、二十二時を期限とした投票で勝敗が決する。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る