狼が散り、役が散り、孤独に戦う

4-(1/7)何故、役を騙るのか


 場には六名、想定される狼数は二名。

 ミスは許されない。


「大前提として蝶野チョーノを処刑すれば、吾輩が今夜襲撃され明日が来る。それでもグレーから処刑するというのであれば、吾輩は早乙女サオトメそう」

王賀オーガサマに合わせるの嫌だけど、アタシもグレーの四人から選ぶなら早乙女サオトメチャンなのよねぇ」


 脳が焼き切れ突然死した白戸シロト警護セキュリティで、王賀オーガ蝶野チョーノの二狼が警護セキュリティかたっているという可能性は除外する。

 

 狼でやるにはあまりにもメリットが薄いからだ。


 警備セキュリティ白戸シロトを護衛し狼も襲撃先として白戸シロトの部屋を選び、白戸シロトが突然死したと考えるのが妥当だとうである。


「あの、私……グレーなら管木スガキさん、警護セキュリティの二択なら王賀オーガさんだと思います。半田ハンダさん処刑の強行姿勢、乱暴過ぎました」

早乙女サオトメ、ざぁこで主体性ない癖にどの面下げて言ってんの? アンタだって半田ハンダの処刑、賛成してたじゃん!」

「私は深川フカガワと同じで蝶野チョーノを処刑したい。深川、君が蝶野チョーノを処刑したい理由も話してもらおうか」


 僕が御劔ミツルギ白視しろしする理由。

 民意に対する逆行や半田ハンダかばい、そして衛星墜落阻止という最優先の目的が確定狼である関西カンサイの言葉と合致しない。

 僕が王賀オーガ警護セキュリティと考えた理由。

 王賀オーガの立ち位置や発言力から、彼が狼で軽曽根カルソネからクロ判定を打たれても構わずき殺すはずだ。

 彼と関西カンサイが仲間なら結託し信用勝負を制するように思える、それを御劔ミツルギと全員に伝えた。


深川フカガワ吾輩わがはいを真として見てくれるのは光栄だが貴様の御劔ミツルギ白視理由は弱い。御劔ミツルギが狼で勝ち抜いても、関西カンサイの意向を無視して衛星墜落を阻止することは可能だ」

「さっきの続きだけど、管木スガキチャンは確かに半田ハンダクンの処刑に加担してた。結果は間違いだった。でも、その時々で思考を回して根拠も提示したのよね……これは管木スガキチャンだけじゃなく御劔ミツルギクン、深川フカガワクンも。で、その姿勢が薄いのが早乙女サオトメチャンなの」


 御劔ミツルギ蝶野チョーノ 早乙女サオトメ王賀オーガ 管木スガキ王賀オーガ

 王賀オーガ早乙女サオトメ 蝶野チョーノ早乙女サオトメ


 僕は現状、蝶野チョーノの処刑を希望。

 しかし微かな違和感が残り、議論は混迷を極める。


「言っちゃ悪いけどさぁ、ざぁこの蝶野チョーノおばさんが狼なら、警護セキュリティなんか騙らないでそのまま沈むよね?」

「あ、でもそれなら私、王賀オーガさんの方が〝騙る必要〟ないと思います……やっぱり蝶野チョーノさんが狼なのかも」

菅木スガキ、ババアっつったか今? アタシ二十代だぞ?」

「吾輩がグレーの狼なら騙る必要はないな、処刑されまい。真だから出るべきと思ったまでだ」

「どちらも一理ある。深川フカガワ、君の意見も聞こう」


 王賀オーガ蝶野チョーノ、どちらが狼だとしても何故なぜわざわざ警護セキュリティを騙るに至ったか。

 

 そして、その結果どのような事態が予測されるか。


 その二点に着目した早乙女サオトメさきひるがえし、管木スガキは自説を補強し始めた。

 

 

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