3-(6/7)警備、所在、護衛先


 御劔ミツルギの行動が演技やポーズではないのなら、彼は衛星墜落を阻止したい。

 その場合、関西カンサイ今際いまわきわに残した〝仲間の狼〟の人物像からは遠ざかる。

 そして何より、結局は処刑されてしまったが三日目の時点で民意に逆行して半田ハンダを庇い続けたのが御劔ミツルギだ。


「ところでさぁ、ギャルのお姉ちゃん守れなかったざぁこ警備セキュリティって誰だったんだろうね」

「あ、私は違います」

「僕もちが……いや、おい早乙女サオトメ!」

早乙女サオトメ深川フカガワまで……君達は…………」

「貴様ら……この場で警備セキュリティについて言及してどうするのだ?」

「アタシも王賀オーガサマと同じ意見。管木スガキチャンも答えた二人も、バカじゃないの?」


 管木スガキの独り言に早乙女サオトメが反応し、釣られて僕も答えてしまった。

 娯楽として楽しむ人狼ゲームなら〝全員〟が揃った場でなされる議論時間以外での対話や役職に関する言及は御法度ごはっとだが、衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフにおいては少人数での密談や自由時間の行動も全て要素や推理材料になり得る。

 

 そして、今この場で警備セキュリティの話題に触れるのは悪手。

 僕としたことが、迂闊だった。


「え、ごめんなさい……でもどうして?」

「こうなってしまった以上、僕が話しておく。悪かったよ」


 ⑧→⑥→④とメモ帳に書きながら、僕は早乙女サオトメに説明を開始する。

 八名は今日の総数、そして関西を処刑したことで七名に減少。

 このタイミングでもし今夜、例えば最も襲撃を受けそうな白戸シロト警備セキュリティが守りきった場合は七名のまま五日目を迎えることになる。


 ⑧→⑦→⑤→③

 処刑回数が一度、増えるのである。


「あ、しかも択を間違えても即負けにならないんですね?」

「そういうことだ」


 ⑥→④で六名の日に人間を処刑してしまえば、四名中の二名が狼として生き残り狼陣営の勝利確定。

 しかし⑦→⑤→③なら七名の日に人間を殺してしまっても、五人中の過半数たる三名は人間なので首の皮一枚繋がる。


深川フカガワの言うとおり、それに今夜でなくとも明日……六人の日に襲撃阻止が起きても状況は好転する。しかし……いや、よそう」

「吾輩も、ノーコメントだ」


 御劔ミツルギ王賀オーガの言葉を受け、蝶野チョーノ管木スガキも俯く。


 確定白の白戸シロト警備セキュリティである可能性、そして今夜……彼が襲撃される危険性。自身の部屋は護衛できないという仕様から白戸シロトが命を落とす顛末。

 

 おそらく、全員の頭をよぎった懸念事項だろう。


 情報を増やし、疑念も増やしながら僕らは解散した。


 翌朝、個別識別板パーソナル・カードを見た僕の……そしておそらくは人間陣営も狼陣営も全員の心拍数が跳ね上がる。


『狼陣営、襲撃失敗』

『人間陣営、護衛成功』


 二行の通知に喜びながら議論ホールに向かい、席に着く。


 僕が来る前に御劔ミツルギ管木スガキが、その後に王賀オーガ蝶野チョーノ……最後に早乙女サオトメが議論ホールに入室。


 いつまで待っても、白戸シロトは姿を現さなかった。

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