2-(4/7)寡黙整理吊り


 解析アナライズが生きているならば、パンダはノータイムで処刑するのが定石セオリーかもしれないと僕は思っている。仮に半田が人間だったとしても、だ。

 半田ハンダに投票し、翌日の解析結果アナライズ・リザルトが〝シロ〟なら、彼にクロ判定を打った関西カンサイ破綻はたんする。

 自動的に狼の一人が露出し、後は警備セキュリティ軽曽根カルソネを護衛すれば勝てる盤面となる。

 半田が〝クロ〟で関西カンサイが真、そして関西カンサイが襲撃されたとしても半田ハンダ軽曽根カルソネで狼を二人落とせることになる。


吾輩わがはいは、半田ハンダを処刑すべきと思う。この男はもはや仲間ではない」

「んー、なら私も王賀オーガサマに賛成かなぁ? いや、ちょっち考えさせて〜」


「お、ええなぁ。そのまま半田ハンダを殺したってや!」

「あーしの味方で〝シロ〟なんだから、やめてっつってんじゃん!」


半田ハンダ処刑の場合、警備セキュリティ軽曽根カルソネの護衛も検討してくれ」

深川フカガワの意見に私も賛成だ。そして半田ハンダの処遇も慎重に検討したい」

王賀オーガ殿や蝶野チョーノ殿が半田ハンダ殿を処刑したいのは、調査サーチ真偽しんぎを決め打ったということでござるか?」


 渦中のパンダ判定、半田ハンダ本人は黙ってうつむいている。


 その時、早乙女サオトメ管木スガキが口を開いた。


「私は……半田ハンダさん処刑がいいと、思います」

「あたしさぁ、半田ハンダは飼って鴨山カモヤマみたいな……ざぁこ全開のおっさん落としておきたいんだけどぉ?」


 管木スガキから唐突に矛を向けられた壮年の政治家、鴨山カモヤマが異を唱える。


管木スガキさん、それは私が一言も発言せず進退を見守っていたからかね?」

「そうそう。結局さぁ、衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフってレスバみたいな面もあるしぃ? おっさんみたいなざぁこは生き残れなくなーい?」


 鴨山カモヤマは、政治の場においても私生活でも人の話に割って入らず、妨げないことを信条としていたらしい。

 誇れる人間性かもしれないが、この場に限っては残念ながら管木スガキに理がある。


「私は落ち着いて全体を見渡したい。それが長年貫いてきた生き方だ」

「でもねぇ、ざぁこ丸出しの鴨山カモヤマおじさん生きててもさ、情報落ちないし遅かれ早かれ処刑されるくない?」


 情報が落ちない。

 人狼ゲームにおいても、寡黙かもく整理せいり吊りという名の悪習が存在した。

 寡黙、つまり口数が少なく思慮深い者を人数が多い序盤のうちに処刑する行為を指す。


 パーティゲームとして楽しむのなら、鴨山カモヤマの生き方も肯定されたのかもしれない。

 しかし、命の懸かった衛星墜落論戦サテライト・ワーウルフの本質は推理と他者排斥の二側面を持つ。

 イチャモンをつけ屁理屈をこねくり回し、とにかく自分以外の弱そうな人間を処刑するという最低な行動もまかり通るのが、この企画である。


「オイラも悩ましい、でやんすけど……今日の処刑先は鴨山カモヤマさんにしたいでやんす」


 王賀オーガ蝶野チョーノ早乙女サオトメの三人がパンダ処刑に傾き、僕と御劔ミツルギ白戸シロトが判断を保留にしている間に解析アナライズから決定が下された。


 唯一の人間役職が確定している彼の言葉は、絶対である。

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