第18話 ライバル?

「そんなにいいものか?」

目の前で熱弁する佐々木を放置し、祐立は静かに呟いた。


夏休みが終わり初の登校日、クラスに転校生が来るとの事だ、クラス中その話題で持ちきりだが、変化を嫌う祐立だけはイマイチ良さが分からず、盛り上がるクラスメイト達を遠い目で見ていた。


そんなクラスのガヤガヤを切るようにHRの開始を知らせるチャイムが鳴った。

「えー、転校生を紹介する」

そう言って先生が連れてきた女子を見た祐立は驚きを隠せなかった、

その女子はぱっちりとした目に艶やかなポニテとTHE女子高生と言った外見だったが、問題はそこでは無い。


彼女は黒板に自分の名前を書いた後つかつかと歩き出し、

「神野 美巫女みみこと言います、このクラスの祐ちゃんのお嫁さんです!」

祐立の前でぴたりと止まり、にこやかに宣言した。

転入生の大胆な自己紹介にクラスは一瞬凍り付いた、が次の瞬間。

男女問わず大量の罵倒が祐立へ向かった。

「テメー何股すれば気が済むんだよ!」

「羨ましいんだよ○ね」

「ゴミクズ男が!」

祐立は男女問わず飛んで来る罵倒の中呆れ顔で、

「噓をつくなただの従兄妹だろうが」

そう言って彼女のほっぺたを引っ張った。


その日の彼女は常にニコニコしながら祐立にくっ付いていた。

正に自分こそが正妻であると言わんばかりのその姿にクラスメイト達は

「一途で可愛くね」

「正妻が居るってことは天子ちゃんと真心さんはやっぱりフリーってことだよな」


と好き放題いっている

当の本人である天子は恋の先輩である岡野と話していた。

「天子良いの?あんなぽっと出の女に神田奪われて」

「イヤだよ、だけど祐立の従兄弟なら仲良くしないとじゃん、、、あと祐立を1番好きなのは私だし」

下を向きながら言う天子を岡野は思いっきり抱きしめた。


昼休み、屋上では亜美と美巫女が向かい合っていた、お互い警戒する様な空気感の中、亜美が先に話を切り出し苛立ちを隠せない声で言う

「従兄妹だか何だか知らないが、TPOも弁えず校内で濃厚接触すると風紀が乱れるし神田にも迷惑がかかる、今すぐやめてもらおうか。」

美巫女は困り顔で頬をかきながら、

「えーっと真心さんだよね、ごめんねでも、好きって気持ちは抑えられないの。ただのの真心さんには分からないと思うけど祐ちゃんすっごくカッコイイんだよ。」

顔を赤らめながらいう彼女の口元からは意地の悪い笑みが零れていた。


「てゆうか他にもイチャついてる人がいるのになんで私ばっかりに言うんですか、嫉妬ですか?それとも、あなたもゆーちゃんのことすきだったりするんですか?」

ニヤニヤしながら聞いてくる彼女に

「だとしたらどうする?」

亜美が毅然とした振る舞いで返すと

彼女は突然笑いだした。


「きゃはははは、ごめんね笑っちゃって。

ただ、今日見た感じあなた、ゆーちゃんよりも背が高くて、勉強も運動もできるんでしょう、オマケにこんな風船みたいなのつけて。」

彼女は亜美の胸をつつきならがら続けた。

「貴方みたいななんでも出来る系の女って最初っから異性の恋愛対象外なのに、ライバルぶっててマジウケる」


亜美は煽り文句など気にもとめず、美巫女をじーっと見つめてニヤリと笑った。

「フ、あの天子バカにもお前の様な裏表があればやりやすいんだがな、」

そう言ってポケットからボイスレコーダーを取り出した。

そこには先程の音声が録音されており、顔を青くする美巫女に、

「キャラ作り大変だったろうに1日でメッキを剥がしてくれて助かるよ。

コレを神田が聞いたらどう思うのか気になるなぁ」

美巫女以上の意地悪な顔でそう告げると、

美巫女は血走った目で「返せ!」と飛びかかった。

亜美はそんな彼女を当然のように制圧し、彼女の耳元で先程の音声を流て言った。

「お前の様な量産型の人間は、はなから眼中に無い」

その言葉と同時に、ボイスレコーダーを粉々に踏み潰し、スタスタとその場を去っていった。


しばらくして屋上に1人取り残された美巫女は恍惚の表情で

「亜美姉さま」

と呟いた。

次の日、真心亜美ファンクラブに会員がまた一人増えたとの事。

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天使と悪魔に魅入られました。 カイ氏 @mukyoo

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