第17話ボランティア

「クソ、なぜ私がこんな事を」

亜美は悪態をつきながら袋の口を結ぶ、

「それもこれも、、、、、、」


その日亜美は生徒会の仕事を終え、家で一休みしていた、すると外から。

「ボーラーンーティーアに行くぞー!」

理解の出来ない言葉を聞いた亜美の頭はフリーズし、

「空耳だな、うん空耳だ。」

そう納得して無視していると。

その声はどんどん大きくなっていき騒音レベルになった。

さすがに声の主に文句を言いに行こう、と決め玄関まで行くと、

「ボーラーンーティむぐ」

と声の主が口を塞がれた音がした。

海での1件もあり心配してドアを開くとそこには、

祐立に口を抑えられじたばたしている天子の姿があった。

事件性が無いことに胸を撫で下ろした亜美は家に戻ろうとするが、

「もーらーんーひーあ《ボーラーンーティア》」

と、口を抑えられている天子に引きずり出されてしまったのだ。


「それもこれもお前のせいだぞ御使!

なぜ私が誰が捨てたかも分からないゴミを拾わねばならんのだ!」

亜美はテキパキとゴミを拾いながら文句を言う。

「まーまー、私知ってるんだよ、アメリカのはーばーど大学って所に行くためにはボランティアの経験が必要なんでしょー」

「渡米するつもりも金も無い」

「どっちみち大事な経験だよー」

天子は亜美の文句をいつものゆるゆる会話術でいなしている。


一通りゴミ拾いが終わりゴミを収集場に持ち帰る最中、ふと思った事を聞いてみる。

「つーか昨日生徒会でボランティア活動やって無かったか?」

「どこの誰かも分からんやつのために私が貴重な休日を返上する訳ないだろう。」

(コイツマジでボランティア嫌いだな)

亜美を見ながらそんな事を考えていると隣にいた天子がいない事に気づいた。


周りを見渡すと、近くの公園で、遊んでいる中学生たちに絡んでいた。

「君たち今ポイ捨てしたでしょう!ほら、ここにゴミ袋あるんだからここに捨てなさい!」

そう言って袋をポンポンと叩く。

だが中学生達は

「は?俺たちがやったって証拠あるんですかー?」

そう言ってギャハハと笑いだした。

そんな彼に頬を膨らませて、

「どう見てもあんた達が捨ててたでしょいいからさっさと拾いなさい!」

そう言って他のゴミを拾う天子の前に、彼らは噛んでいたガムを吐いて、

「ゴミ拾いの手伝いさせてやるよガキー」

「チービ」

そう言ってまた笑いだした。

「アイツら!」

隣にいる亜美は血走った目をしており今すぐにでも殴りかかりそうだ。

実際祐立もムカついていた、がこの状況にデジャブを感じていた。


そう、それは小学校の時、、、

クラスの中でもやんちゃだった佐藤は清掃委員の仕事を全くせず毎日のように遊んでいた。

言っても聞かない彼に教師も半ば諦め気味の中、天子だけは毎日のように佐藤の代わりに掃除をして、

「一緒にしよう。」

と諭し続けた。

祐立は、たまに手伝いながらも、「なんでこんな事するんだろう。」と内心呆れていた。

だが1週間後、驚くべき事が起きた。

佐藤が放課後の清掃を進んで行うようになったのだ。

それからと言うもの佐藤は誰よりも委員会活動に精力的に取り組むようになり、教師からの評価もうなぎ登りだった。

その1件があって以降、祐立は天子の人まで変える優しさを尊敬するようになったのだ。


そんな過去を思い出した祐立は、

「まあ、ここは天子に任せよう。」

そう言って亜美を連れ帰ってボランティアを終えた。

どうやら天子はその日、ボランティアが終わっても彼らの捨てたゴミを拾い続けたらしい。


ボランティア活動が終わって3日後、

祐立は、あの日の公園で天子と一緒にゴミ拾いをしてる中学生達を見かけ、微笑みながら

差し入れを持って彼らとゴミ拾いをしていた。




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