第16話夏祭り
ピーンポーン
夏休みも中盤、
課題を一段落させて休憩していた祐立の耳に来客を知らせるチャイムの音が聞こえた。
返事をしてドアを開くと、そこには浴衣を着た幼なじみ2人の姿があった。
寝巻き姿の祐立に天子は、
「おーまーつーりー行こ!」
と言って腕をグイグイ引っ張ってくる。
「分かった、準備するから少し待っろ」
祐立はそれだけ言って家に引っ込んだ。
祭りの会場にはたくさんの人々がおり、子供の笑い声、店員のセールストークなど、賑やかな雰囲気に溢れていた。
俺はと言うと、2人のためにたくさんの食べ物を買っている、
(2人とも食べるの好きだからなー)
そんな事を考えて2人のいた場所に向かうと、
「いい加減にしろ!迷子なんて無限にいるんだから子供の1人や2人その辺に置いておけ!」
「そんな事出来るわけ無いじゃん!可哀想だと思わないの?」
ウチの天使と悪魔は大喧嘩をしていた、
周りの人は距離をとり、子供の方が気を使ってまあまあまあとなだめている始末、
「もういいもん、1人で連れていく!」
そう言って天子は2人の子供を連れて本部テントまで行ってしまった。
残された亜美に唐揚げを渡すと、寂しそうな顔をしながら食べていた。
20分後、やりきった顔の天子と合流し、買った食べ物を渡している最中、
放送が鳴った、
「迷子のお知らせです、赤い帽子を被り、青のオーバーオールを着た男の子を見かけたら至急本部テントまでお越しください。」
それを聞いた天子は「探しに行ってくる」と言って踵を返した、が腕を亜美に掴まれ先程以上の声で怒鳴られる、
「いい加減にしろ!なぜお前は危険な目にあったのに学習しない、人助けなんか百害あって一利無しなんだよ!」
「そんな事ない!」
「そもそもあんなゲスが居るのだって、お前のような甘ちゃんが騙されて成功体験を作ったからだ!」
「ツッ、、、」
「鈍臭い人間の助けなんてありがた迷惑でしか、、、」
止まらない亜美の口撃に祐立が思わず肩を掴み、
「亜美!、、、言い過ぎ」
と抑えると、ハッと冷静になった亜美は
「すまん、今のは」
と弁明をした、しかし天子は泣きながら人混みに走り出してしまった。
ヒック、ヒック
近く神社の石段の上、1人体育座りをしていた天子は先程の亜美の言葉を思い出し涙を流していた。
「わたし、今まで迷惑だったのかなぁ」
頭を抱えて自問自答をしているとポンポンと肩を叩かれた、
振り返るとそこには汗だくで息を切らしている祐立が立っていた。
ホッとしたような顔をする彼に、天子は謝ろうとするが、それを遮るように
「ここ、花火見るのにめっちゃ良い場所じゃん、あと数分で花火だし、天子は本当に運が良いな。」
そう言ってニコニコと笑った。
謝れなくて俯く天子に、
息を整えた祐立がポツリポツリと話し出した。
「亜美はさ、3人で祭りを楽しみたかっただけなんだよ、だからお前がどっかいっちゃった事が寂しくって、それでイライラして当たっちゃっただけで本当にあんな事思ってる訳じゃないんだ。」
その言葉で、天子はハッとした。亜美の事を自己中呼ばわりしていたが、自分も一緒に来た2人の事を考えれていなかった。
その事に気づいて直ぐに祐立に謝ると、
「うんうん、でも謝るなら僕よりもさ」
そう言って笑顔の祐立が指を指した方向には、
息切れをしている亜美がいた、
天子は、
「ごめん!亜美ちゃんの気も知らずに」
と抱きついた。
すると、亜美も息を整えながら
「こちらこそ、すまん、言い過ぎた」
そう言って抱き合う2人を照らすように、大きな花火が1つ上がった。
石段で並んで花火を見ていると、祐立がふと、
「時々喧嘩してもさ、ずっと3人で仲良く出来たらいいな」
とつぶやく、
2人は「うん」と頷きながらも、
どちらかの恋が成就した時この関係は、崩れ去る。
その未来を思い複雑な心情だった。
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