第15話 海②

青い空、白い砂浜、黄色い太陽、海で遊ぶには絶好の日である。

そんな中、御使 天子は海にも入らず1人でアイスを食べていた。

時は遡る事30分前


天子は、「今日こそ距離を詰めるぞ!」と意気込み 先日、岡野と選んだかなり攻めた水着を着ていた。

経験豊富な岡野が選んだビキニは、可愛いらしい上、程よく肌が出ており、少し恥ずかしいながらも、魅力がある!と実感していた。

実際、水着を見た祐立も「可愛いじゃん」と褒めてくれて、天子はホクホクとしながら亜美を待っていた。


だが、後から来た亜美の魅力は「可愛い」なんかで言い表せるものではなかった。

予算の無い亜美が佐々木先輩に買ってもらった水着はマイクロビキニ、

風紀委員長変態が我欲で選んだだけあってその水着はとてつもない破壊力を誇っており、プロポーションの差もあって、明らかに魅力の差を感じた。


そして、更衣室から出てきた亜美が、

「少し露出が多いがどうだ?」

と聞くと祐立は、

「いや、それ、出しすぎだろ」

と、赤面しながら言った、


それを見て、自分と亜美との反応の差に悔しくなった天子は、

「私、お腹すいたからアイス食べてくる」

と言って海の家まで走り出してしまった。


アイスを食べ終えた天子は、胸元を触りながら落ち込んでいた、

「ううー頑張ったのにー、確かに亜美ちゃんのに比べたらだけどさー、もうちょっとさぁ」

天子は先程「可愛いじゃん」といつものテンションで言われた時、満足する一方、もう少し照れるような、それこそ、亜美対する反応をして欲しかったと言うのが本音であった。

「私もあの水着を着れば少しは、、、

イヤイヤあの水着ほぼ紐じゃん。あんなの恥ずかしくて着れないよ。」


そんな事をブツブツと言っていると、

チャラそうな2人の男が話しかけて来た。

「ねえねえそこの君!あっちでオレらの連れが、熱中症で倒れてるのね。だからさ水持ってオレらに着いてきてくれない!」

彼らの焦らせるような言動に、

「わ、分かりました!」

そう言って天子は水を持ってその2人について行ってしまった。

天子が海の家を離れた数分後、天子を呼びに、亜美と祐立が海の家に来た。

祐立は辺りを見渡して天子がいない事に気づき焦るように、

「天子いなくね?」

と言い、それに気づいた亜美も

「私はトイレを見てくる」

そう言ってトイレに急いだ。


その頃、天子は2人の男の言われるがまま、岩陰についてきていた。

岩陰には顔を真っ赤にしてブルーシートの上で寝ている男がおり、天子が急いで、

「お、お水です。」

と水を渡すと。

「いや、酒で腹がタプタプだから良いや」

と言って水をその場に置いた。

まさか拒否されるとは思っていなかった天子が、

「え?熱中症なんじゃ」

と聞き返すと、その男はムクリと起き上がり。

「そんな事よりさ、ねっ、チュウしよう」

と言って唇を近づけてきた、恐怖で天子が逃げようとすると、2人の男に羽交い締めにされて、口を塞がれた。

(嫌だ!まだ祐立としてないのに!)

天子は泣きながら暴れるが動けず声も出ない、


酒飲み男は目を瞑りながら近づいて来ており、男の唇が数センチ程の距離に近づき酒の匂いが鼻にきた時、

両手が自由になり近づいて来た男を突き飛ばす事が出来た。

後ろを見ると、自分を拘束していた2人の男は倒れており、祐立と亜美が怒りのこもった目で正面の男を睨んでいた。

突き飛ばされた男は、目を開けると仲間が白目を剥いて倒れている事にギョッとして一目散に逃げ出した。


緊張の糸が解け、天子がポケーっとしていると祐立の大きな腕にに抱きしめられた。

(あったかい)

そう思って抱きしめ返すと、祐立が細い声で

「無事で良かった、」

と、呟いた。

その言葉で胸がいっぱいになった天子の口からはお礼のように、

「大好きだよ」

という言葉が零れていた。

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