第14話 海①

夏休みが始まり2週間が経った。

天子は補習、亜美は生徒会活動、に明け暮れながらあの日の言葉を思い出していた。


「付き合いたいとも思わないんだ。」

告白の失敗を示唆するその言葉は2人の心を折るには十分すぎるものだった。

2人っきりでのデートに誘い異性として意識させたつもりだったが、そもそもデートではなく遊びに行っただけと言われる始末。

そして、恋愛経験の無い2人はそれ以上の距離の詰め方が分から無い状態であった。


「でさー、祐立と付き合うにはどうしたらいいと思う?」

補習終わりに天子は、友人の中で最も性に奔放と言われる岡野に相談していた。

「てか、マジで付き合ってなかったんだ」

岡野は、恋愛相談を切り出した天子にまず驚くような反応をする。

そして、少し考えた後

「私はー、今彼とはヤッてから付き合い出したしーとりあえずヤッてから考えればー、的なことは純粋な天子には難しいだろうからー」

「ヤッてから?」

天子の頭の上に?が3つほど浮かぶ

「肌と肌を密着させてみたら?幼なじみとして、自然な感じで。」

岡野的には手を繋いでみたらくらいの気持ちで提案したのだが、

「ぎゅーは確か前に祐立の家でした事あるよ」

誇らしげに言う天子に今度は岡野の頭に?が浮かぶ

「え?、家に上がって、ハグをしてそれでも付き合ってないの?それは神田クズ過ぎない?」

岡野の引いたような発言に

「そんな事無いよ、ただ私たちの事大切にしてくれてるだけだよ」

と、天子はフォローを入れる。

その後しばらく色々語ってくれた岡野に、

天子はお礼を言って祐立に連絡を入れた。



ここは生徒会室、連日の会議により役員はほとんど休んでいる。そんな中、亜美が資料をまとめていると

「真心書記、3年の教室に行って風紀委員長を読んできてくれ、それは僕がやっとくから」

と生徒会長に頼まれた。

「良いですけど、、何でですか?」

興味本位で聞いてみると、

「生徒から没収した成人向け雑誌を私的に持ち帰っている所を見つけてね」

会長は困った様子で頬をかいた

「あーそれでお叱りを」

全てを理解した亜美は生徒会室を出た。


3年の教室に向かっている途中にいい考えが浮かんだ。

(なるほど、あの風紀委員痴女に相談すれば神田への距離の詰め方が分かるかもしれないな)

3年の教室に着いた亜美は、佐々木先輩を呼ぶ。

彼女は案の定勉強をしておらずすぐにこちらに来た。


そして、開口一番亜美が

「私、恋人にしたい人が居るのですがその人から恋愛対象として見られてません、どうすればいいですか?」

と質問をすると、彼女は目を丸くして

「ええーーーー、真心ちゃんが恋愛!?私が彼氏の自慢をしてたら汚物を見るような目で見てきたあの真心ちゃんが?」

「はい、私には恋愛経験が無いので。」

イラッときながらも藁にもすがる思いで返答すると、返ってきた言葉は藁よりも役に立たない言葉だった。


「彼の家に行ってー、全裸で襲えばいいじゃん」

「は?」

その非常識な回答に思わず聞き返す、

「だってー、真心ちゃん程のエロい身体が迫って来て意識しない男なんていないと思うよ」

その、痴女さながらの回答に、半ギレで反論する。

「それ、失敗したら修復不可能どころか犯罪じゃないですか!」

焦りながら言う亜美に、佐々木先輩はドヤ顔で返答する。

「そんなことにビビってて恋をモノに出来ると思う?」

(コイツ、、、痴女のくせにそれっぽいことを)

堂々とした態度に心の中で悪態をついていると、


「まあ、半分冗談として」

(半分?)

「異性として意識させるんだったら性的魅力をアピールするのが1番大事だと思うよ」

「なるほど、ありがとうございます。

そういえば、会長が生徒会室に来いと言ってましたよ。」

亜美は、笑いながら言う先輩にお礼と、会長がご立腹な事を伝えると、顔を赤くしながら祐立に電話をした。


そして、相談を経て2人は同じ結論にたどり着いていた。

「海だ!」

かくして3人は海に行くことになった。

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