第13話 ゲーム
「ハァ、ハァ、ハア、ハア」
真心亜美は急いで待ち合わせ場所に向かっていた。普段はいの一番に着くのだが、今日はたまたま寝坊してしまったのだ。
待ち合わせ場所には既に2人ともおり何やら話が盛り上がっているようだった。
電柱の陰から耳をすませてみると、
「昨日の夜は楽しかったね」
(昨日の夜?)
「アソコ祐立上手すぎでしょ、おかげでめっちゃヤレたし」
(上手すぎてめっちゃヤレた!?)
「ラスト2回は特に気持ちよかったよ」
その言葉を聞いた亜美が頭を電柱にぶつけていると亜美を見つけた天子が、
「ごめんごめん、ゲームの話で盛り上がってて気づかなかったよ」
(ゲ、ゲーム?)
安堵している所に祐立が、
「そうだ、今日の放課後亜美もやろうぜ、」
(祐立とゲームか)
その姿を想像してワクワクしていたのだが、
もうひとつの悪い思い出が頭をよぎる。
「悪いが、私はやめておくよ」
「何でだ?」
「私も幼い頃はやっていたんだが、私には向いていなかったみたいだ。」
(亜美はそう言って、昔ゲームでボコボコにして喧嘩になってしまったクラスメイトを思い出していた)
そういえばあの時の喧嘩を止めてくれたのも祐立だったな。
寂しそうに断る亜美を見て天子は手を握りながら、
「私が教えるから大丈夫だよ、2人で上手くなろ!」
その、純粋な瞳を見て亜美は、
「お手柔らかにな、」
そう笑い返した。それが今朝の事
「も〜全然勝てないー」
亜美は天子の家でゲームをしていた。
「はっはっはっ」
「どこが向いてないのさー!」
その、何気ない天子の一言に亜美は俯いて、
そして訊いた。
「なあ御使、私とゲームしてて楽しいか?」
天子はその質問に首を傾げて
「うん!普通に楽しいよ」
そう笑顔で答えた。
「そうか、」
嬉しい答えだが、心は晴れない。
ピーンポーン
「あ、祐立かも」
インターホンがなったため天子は玄関に向かう。
「お前、ゲームも持ってない貧乏人のくせに生意気なんだよ。」
頭の中で、昔言われた言葉を思い出していると、
「よぉ亜美、天子の話を聞くに相当強いらしいが、俺はそうはいかねぇぞ」
祐立が部屋に入ってきた。
loose
「だーー、また負けた!」
祐立のその声に亜美はビクッと反応する。
頭を抱える祐立の姿を見て、
(やはり、私にゲームは向いていない)
そんな事を考えながら俯いていると、
「このゲーム、今日初めてやったんだよな、何でこんな強いんだ。教えてくれよ」
亜美は驚いた、心の広い祐立の事だ、怒ったりなどはしないとしても、初心者の女子に惨敗していい気のする者などいないだろう、ましてこんなに好意的に話しかけられるとは思わなかった。
「祐立は、私とゲームしてて楽しいか?」
下を向きながらモジモジと聞く、
「ん?当然だろ。今は負けてるけどコツを教わったら負けねぇからな!」
笑いかけながら答えた祐立のその言葉を聞くや否や、亜美が来る前から抱えてきた嫌な記憶が頭から消え去った。
普段の調子を取り戻した亜美は、
「フフン、私はスパルタだぞ!覚悟するんだな」
天子のように晴れやかに笑い、そう言った。
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