第12話 探しもの
「あれ?おっかしーなー」
カバンの中を探してみるが見つからない。
「ごめん、2人とも鍵落としちゃったみたいだから、今日はお土産渡せないわ」
そう言って寄り道してくれた2人に謝る。
それを聞いた亜美は顔を青くして
「な、落としたのか?どの辺にだ?」
と、肩を掴んで問いただしてくる、一方天子はあっけらかんとした顔で、
「亜美ちゃん大袈裟だなー、交番に行って届けて貰うのを待つだけじゃん。」
とヘラヘラしている。
「大袈裟なものか、鍵を使えば印鑑や通帳はもちろんのこと、カメラを仕掛けたらパソコンやスマホのパスワードを盗むこともできるんだぞ!」
と、声を荒らげた亜美の主張を聞いて、たどたどしくも反論する。
「そ、そんな酷い事する人がいるわけ無いじゃん」
「ここら辺で空き巣が多発しててもか?」
そう言って亜美はニュースを見せる。
「大変だーー!」
それを見た天子は大慌てで走りながら、
「私、色んな人に鍵見てないか聞いてくるね。」
それだけ言って行ってしまった。
2人っきりになった後亜美は、
「じゃあ私も探しに行く、心当たりが無いわけじゃないんだ。」
そう言ってトコトコと歩いて行ってしまった。
「あの〜すいません、この辺に鍵落ちて無かったですか?」
「ねぇねぇ僕たち、この辺にさ鍵落ちてなかった?」
老若男女に聞いて回るも目撃情報はひとつもない、
「もう拾われちゃったのかなぁ」
と、額の汗を拭い近くの自販機でジュースを買って飲んでいると、
「あら、どうしたの天子ちゃん」
と町内会のおばちゃんが話しかけてきた。
「実は、友達が鍵を落としちゃって」
「あら、最近空き巣が多いし怖いねぇ」
「そうなんです、何か知りませんか?」
「そういえば、源さんが交番に行くって言ってたから、もしかしたら拾ったんじゃないかしら。」
「確かに、、、ありがとうございます!」
笑顔でお礼を言って交番に向かった。
交番に着くと祐立が既に紛失届けを書いていた。
届いて無かった事に落ち込んでいると、
「そういえば、亜美知らないか?」
と聞かれ
「見てないよ」と答えると、祐立が心配そうに、
「心当たりがあるって言ってたが、大丈夫なのか?」
と、呟いていていた。
交番の近くの公園にて、、、
「お前だな、」
亜美は交番を見ている30代あたりの男に声をかけた。
「な、なんですかあなたは。」
動揺している男に、続けて
「鍵をネコババしても、使う家が分からなければ意味が無い。ならば簡単だ、交番を見ていて書類を書いた人間を尾行すれば良い。」
思考を言い当てられた空き巣の男は、ベンチを立ちジリジリと近づいてくる。
亜美は負けじと胸を張り、
「私はお前なんかに興味は無い、だから鍵を渡して早急に消えろ」
その堂々とした態度が空き巣の怒りに触れたのか
「ガキが、舐めた口聞いてんじゃねぇぞ!」
と殴りかかってきた。
数秒後、、、
そこにはビクビクと痙攣しながら倒れている空き巣の姿があった。
体力、筋力、共に彼の方が上だった。
しかし、空手、柔道共に黒帯を所有する亜美に一般人の拳など止まって見えた。
冷静にその拳を掴んでみぞおちに肘打を当て背負い投げを決め、犯人を気絶させてしまった。
倒れている犯人のズボンから鍵を見つけ、ついでにカバンやコートなどを漁っていると、
「亜美ちゃん!」
聞きなれた声の方を向くと、汗だくの天子が立っていた。
「心配してたんだから。」
それだけ言って抱きついて泣き出した。
祐立も来ており
「コイツは?と指を指す。」
「ああ、そいつは鍵をネコババした張本人で最近この辺を騒がせている空き巣だ。」
と亜美はドヤ顔で言った。感謝されると思っての発言だったのだが、祐立は予想に反し強い力で腕を握ってきた、
「鍵なんかの為に危険な真似するな!」
と噛み締めるように言って交番に向かった。
その、心から心配する様な表情に亜美の心は歓喜で満ちていた。
天子の涙で肩を濡らしながら
「なるほど、これがいいのか」
と、亜美は密かにほくそ笑んだのだった。
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