第11話定期テスト 後編
「カンニングまたはそれと思しき行為は単位を剥奪します。」それでは、初め
先生の声で戦争が始まった。
(な、嘘だろ。アイツのヤマ貼った問題ほとんど出てる)
神田祐立は驚愕していた。
ここも、ここもここも、応用発展まで、こんな正確に予測出来るものなのか。
(これなら天子も安心だ)
胸を撫で下ろした祐立からは今朝までの緊張感が一気に消えて、軽々とペンを走らせている。
神田祐立 前回順位150/80位
(分からない。)
真心 亜美は悩んでいた。
(今回のテストは難しかったのか?
流石に御使の留年がかかってるテストで難易度を上げるとは考えにくいが。)
御使はちゃんと家に帰って復習したのか?
(いざという時は職員室に侵入して回答を改ざんするしか,,,)
完璧な解答用紙の上でもしもの計画を立てていた。
真心 亜美 前回順位150/1位
(知ってるこれ知ってるこの問題亜美ちゃんゼミでやった問題だ!)
昨日の勉強の成果が出ており、問1問2をするすると進める。
えーと、この問題も昨日した奴だ。確か解き方は、、、
ちょっと分かんないや
次のここは、、、、、、分かんない。
(へ?私まさかまずい?)
留年のかかってる御使 天子の成績はいかに?
御使 天子 前回順位150/148位
「はーいそれでは成績表を返しまーす」
クラス全員が成績の話でワイワイする中、たった2人だけは両手を合わせて祈っていた。
「神田君、頑張りましたね。前回より10位も上がってます。引き続き頑張って下さい」
勉強会の効果で順位が上がったが祐立は少しも喜びを見せず、返却された後なのに両手を合わせて祈っていた。
(頼む天子、無事であってくれ)
その様子を見てクラスメイトは不思議がっていたが亜美だけは同じ気持ちであった。
「真心さん、1位の防衛おめでとうございます。この調子で頑張って下さい。」
成績表が返却された後も亜美は席に戻れずに天子を見て祈っていた。
「次、御使さん」
「ハイ!」
ドクン、ドクン、ドクン
3人の鼓動が同じリズムで鳴る。
「頑張りましたね、赤点はひとつも無い上、50位も順位をあげるなんて」
その言葉を聞いた途端、天子の顔は晴れ、祐立はガッツポーズをして、亜美はその場にへたれこんでしまった。
成績表を受け取った天子は、スキップで亜美の前に行きその手を掴んで、
「ありがとう!」
と輝かしい笑顔で言った。
その日は3人とも予定が無かったため3人で帰ることにした。
「天子本当に凄いな、50人抜きだろめっちゃ努力したんだな!」
「いやー、たまたまだよ。」
「いやいや、1桁上げるなんて並大抵の努力じゃ無理だろ。なあ亜美」
「そ、そうだな」
天子が留年を回避し、目的を達成したはずの亜美の心は原因不明のモヤモヤに包まれていた。
「そーだ、そこのコンビニでお祝いにケーキでも買ってあげるよ」
「わーい、ありがとう」
そのモヤモヤに耐えられなくなった亜美は、
「すまん、今日のテストの復習がしたいんだ、だから先に帰る」
そう早口で説明し、逃げるように帰った。
家に帰った亜美は立ち尽くした。
(何故だ、何故毎回1位の私では無く御使が褒められるんだ、何故我が家より裕福なアイツに菓子を買うんだ、そもそも留年回避出来たのだって私のおかげじゃないか!)
気づいたら、亜美の目からはポロポロと涙が零れていた。
しばらく泣いた後、
インターホンがなったため玄関に行くと、天子がコンビニ袋を持って立っていた。
「亜美ちゃん、なんか今日口数少なかったけど体調大丈夫?」
「心配するな」
涙で赤くなった目元を隠すように返答すると、
「良かったー
あ、コレ一応買ってきたのど飴」
「ああ、ありがとう」
「お大事にー」
それだけ言って天子が帰った後
1人の家の静寂の中で
(何でこんなに嫉妬しているのに憎めないんだ)
そう呟いた亜美の目からは再度涙が流れ出した。
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