第8話 男子の話が聞こえてました

ここは、屋上へ向かう階段、屋上へは鍵が無いと行けないため、普段から人の立ち寄らない場所である。

その階段の裏に学校のアイドルである、真心亜美そして御使天子が隠れていた。


時は遡ること数分前、

2人の想い人、神田祐立は大勢と関わるのが好きなタイプでは無く、休み時間には佐々木とばかり話している。

そしてそれとは反対に想いを寄せている2人には周囲に人が多数集まる。

そのため、基本的に2人が学校で神田祐立の声を聞く機会はほぼ無いと言っても過言では無い。


しかし、その日は違った。

その日、神田はクラスの男子グループから話しかけられ、

「神田ちょっといいか?お前に少し聞きたい事があるからこい」

そんな具合で屋上への階段でだべる事になった。


時同じくして天子と亜美は女子グループと共に天子発案のかくれんぼに興じていた。性格は真反対の2人だが思考回路は近しいようで、待ち合わせたかのように階段裏でばったりと出会い、隠れていた。

しばらくすると、階段の上から男子の声が聞こえて来た。


「で、神田、お前実際どっちかと付き合ってたりすんの?」

そう、クラスの男子達は2人を攻略するために最も信頼できる情報筋であり、最大の障壁である神田に話を聞こうとしたのだ。


「だから付き合ってないって、幼なじみなんだから遊びに行っててもおかしくないだろ。」

と、事実のみを答えたが、男子達は

「でも、天子ちゃんと2人っきりで遊んでて付き合って無いって言う方が不思議だろ」

と不満そうに話す。

そして、それを聞いた亜美も同じく不満気に天子の頬をつねっている、


埒が明かないため、祐立は佐々木を納得させたLINEを見せながら、

「そもそもあっちから2人っきりで遊ぼうって誘って来たんだって」

「じゃあ、日曜日に真心さんと2人だけで遊んでたのもそうだって言うのか?」

男子達は希望に縋るように言った、

「ああそうだよ」

その祐立の答えを皮切りに男子達は歓声を上げ、今度は天子が亜美をポコポコと叩いている。


そして、一通り喜びあった後男子の内の一人が、

「じゃあわかった、今付き合って無いとして付き合いたいのはどっちだ?」

2人は争いを止め祐立の回答に耳をすませる。

「あの2人は妹みたいなものだからなー、変な奴に捕まって欲しくはないけど付き合いたいとも思わないんだ。」

「マジ?じゃあ俺ら狙って良いって事?」

「いやお前らは変なやつだろー」

2人にはそう笑って答える祐立の声は聞こえておらず、ショックだけが残っていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る