第5話 デートのその後
「今日は楽しかったー!」
天子はそう言ってベッドで大の字に寝そべった。
「にしても祐立優しかったなー、ゴミ袋持ってくれたし、池から上がった後ハンカチくれたし。最近冷たくなってるって思ったのも私の勘違いだったのかも?」
しばらく今日の事を思い出して天子は考えた、祐立と付き合おうとしていたの第一の理由は彼に昔の優しさを取り戻させる為である、したがって彼が昔のままならばこのまま友達でいた方が3人の関係的にはいいはずだ、そして3人が友達のままの未来と祐立と恋人になった未来を交互に想像しだした。
しばらくたった後天子は、
「私やっぱり祐立が好き、遅刻した私に飲み物をくれたあの手も、急に走り出した私を黙って追いかけてくれたあの足も、そして何より子供が無事と知った時に安堵していたその心も、ぜーんぶ全部独り占めしたい!」
人は周りの人間に大きく影響を受ける。
真心亜美の影響を色濃く受けた天子はその日初めて、己の中のエゴイズム《利己主義》がアルトイズム《利他主義》を上回った。
「ごめん、亜美ちゃん祐立貰うね。」
「フッフッフッ今日のデート、神田は楽しそうにしていたな。」
すきま風の吹く古い一軒家の布団の上で真心 亜美は1人笑っていた。
机の上には図書館から借りてきた山積みになった魚の本、一番くじの発注元である印刷工場の住所を書いたメモ、今までの貯金をほとんど使った美容品の数々、亜美の部屋はデートへ向けた努力の後があちこちに見えた。
「コレで神田の好感度は上がっただろう。だが気になるのは御使だ、アイツもおそらく神田を狙っているのだろう。」
さすがに感のいい亜美は気付いていた、
「あどけなさと、美貌を持つアイツに負けない為には手段を選んでられない、なのに、なのに」
亜美はゴミ箱でクシャクシャにされたメモを眺めて唇を噛む
「どうして私はコレを使えなかったんだ。」
メモにはここらをナワバリにしている不良グループにあえて誘拐される計画が書かれていた。
上手く行けば、
1.神田 祐立の庇護欲をそそる事が出来る。
2.ライバルである 御使 天子に被害者である事を利用し諦めさせられる。
亜美はとある訳があってそんな合理的な選択ができなくなっていた。
人は周りの人間の影響を受ける、
素直で謀の嫌いな御使の影響を受けた真心は祐立をそして同じくらい天子を騙すことが出来なくなっていたのである。
そんな自分に嫌気のさした亜美は、
「御使、正々堂々勝負だ!」
と机に飾ってある3人の写真に向かって言い放った。
その後、あまりにも自分らしからぬ言葉が口から出たため、亜美は静かに自嘲していた。
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