第3話 天使との動物園

「おーーい」

俺は遠くから走ってきたツインテールの少女に手を振る、

こちらに気づいた彼女は息を切らしながら近づいてきて開口一番頭を下げて、

「遅れてごめん、1時間前には出たのにちょっと道中で色々あって。」


色々と濁しているが恐らく迷子を交番に届けたりでもしてたのだろう。そんな善行のあとの彼女対して文句を言えるほど鬼畜ではない。

「大丈夫今来たとこだから。

そんな事より走ってきて疲れただろ、ほらさっき買ってきたお茶。」

そんな俺の発言に天子は碧眼を輝かせて、

「ありがとう祐立」

と満面の笑みで渡した綾鷹をごくごくと飲み干した。

飲み終わった天子は、

「よーしじゃあしゅっぱーつ!」

とさっきまで息を切らしていたとは思えない程の声を出し俺の手を引っ張って動物園に入場した。


「うわぁーすごーいキリンのベロめっちゃ長いじゃん。」

「カバの歯すごーいスマホくらいあるじゃん」

そんな風に大はしゃぎする天子の手にはいつの間にかゴミの入った袋が握られており、落し物と思われるハンカチやポーチなどを拾っていた。

(こんなに楽しそうなのに両手が不自由だと可哀想だ。)

そう思った俺は、

「ゴミ袋と落し物貸して、持つから。」

天子は一瞬驚いた様な顔をしたがすぐに。

「ありがとう!じゃあよろしくね。」

とゴミと落し物を俺に渡してそれまで以上の上機嫌でスキップをしだした。


そして、天子が1番楽しみにしていたカワウソゾーンに着いた。着いてからしばらくはカワウソを見ていたのだが、とある看板を眺めていた天子がニッコニコで、

「ねぇねぇ3時からカワウソに餌やり体験出来るんだって!」

時計を見ると2時50分、やはり普段から善行を積んでるからだろうか、とても運がいい。

「よかったじゃん、じゃあ俺は動画撮っててあげるね。」

なんて話で盛り上がっていると、どこからか子供の泣き声が聞こえてきた。

声を聞くや否や天子が声の先へ走り出した。あの方向は確かビーバーの池だ!不意をつかれ少し遅れてあとを追いかける。

追いつくと、池の前で泣いている小学生1年生くらいの男の子と話していた、と思うと柵を飛び越えビーバーの池に飛び込んでいた。俺が呆気にとられていると、池から上がってきた天子が抱えていたのは泣いていた子と同じくらいの歳の子供だった。


あの後は動物園の医務室に泣いていた子と一緒にに連れていった。どうやら溺れていた子と泣いていた子は双子らしく母親はアイスを買いに行っていたらしい。母親には泣きながら感謝され、子供の無事を聞き天子も同じく泣いていた。


「結局、カワウソの餌やり出来なかったな。」「うんん良いの、今日は色んな嬉しい事があってお腹いっぱいだから。」

と笑顔で言った天子の顔は夕日に燃えて真っ赤だった。




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