第3話 勇者の俺、魔王様を恋に落としました。

時は戻って現在。


魔王様の目の前で愛を叫んだ直後、

俺はプロポーズをしたことを後悔した。


やべっ、いきなり過ぎたか!?

魔王様にドン引きされてないか!?


緊張から、冷や汗が全身を伝う。


俺が戦々恐々していると...


魔王様は困惑しつつも、

頭を下げている俺に優しく声を掛けてくれた。


「勇者よ、気持ちは嬉しいが...。

その、冗談なのだろう...?だって、我は魔王ぞ?

人類の敵ぞ?」


「冗談なんかじゃない!

だって、こんなにも魔王様を愛しているんだから!

...俺の目をみても、これが嘘だって言えますか!?」


俺は熱意の籠もった目で魔王様を見る。


「うっ、確かに、本気みたいだけど...。

うー、困ったなぁ。

わたし、好きとか恋とか分かんないのに...」


魔王様は混乱している!


誰だ!?魔王様にメダ○ニ掛けたのは!!?


「魔王様!俺は必死にここまで辿り着きました!

村を襲う魔物や魔王軍幹部を押し退けて、ここまで来たんです!!

俺が勇者になったのは全て貴方のため!

だからどうか、私めを認知して下さい!

許されるのなら『エーイト♡』ってささやいて下さい!!!お願いします!!!」


俺の必死な想いが届いたのか、

魔王様は呆れながらも優しげな声を掛けてくれた。


「少し、意味がわからぬが...。まあ、よい」


「勇者よ。そなたの熱い想いは受け取った。

こんなこと今まで無かったゆえ、どう応えてよいか分からぬが...。

えーいとっ♡...これでよいか?」


「よいです!!!」


「お、おう、そなたは元気がいいな...」


魔王様に名前を呼ばれた!

これって認知されたってことじゃん!!?


ああ、今まで生きてきて良かった!

つらい修行して、勇者になって良かった!

王様からたったの120ゴールドと『ひのきのぼう』しか貰えなかったときはどうなることかと思ったけど、全てはこのためだったんだ!


「しかし、結婚とは突飛なものよ...。

昼時に其方そなたらが突然来たゆえ、今はこんななりをしておるが...。

我は変身すると氷龍王でもあるのだぞ?

今の見た目に釣られてはおらぬか...?」


釣られてるだって...?

当たり前じゃんか!

見た目で選んで悪いか!!

見た目だって、その人の個性だ!

俺はそれを肯定する!


それに分からんか!?このドジっ娘属性が!!?


大事な宣戦布告の場で、一瞬とは言え本当の姿をさらしたんだぞ!?

あんな美少女を!

皆気づいてなかったけど、

もし気づいてたら魔王様にメロメロになって服従しちゃうとこだったよ!


...いや、それはそれで良いのか?


まあ、とにかく!

魔王様はドジっ娘でかわいい!QED!



それに、聞けば恋にうといというじゃないか!?


こんな綺麗な見た目しといて!!!


こんなの反則だろう!?


もし俺が魔王軍だったら絶対に魔王様をほっとかないね!!

魔王軍のやつら見る目なさ過ぎるのでは!?


なんなら俺はドラゴンの姿だって愛せる自信があるぞ!!


たぶん色々問題がある気はするけど!


兎にも角にも、俺は魔王様が好きなんだ!!

愛してる!ってこと!


「俺は魔王様の全てを愛せる自信があります!」


しかし、俺の熱い想いも、仲間たちには届いていなかったようだ。


「勇者様!目を覚まして!」


「なにいってんだエイト!?」


「人類の未来はどうするのよ!?」


キンキンキンキンと喚きやがって...!


「うるさい!好きになってしまったんだ!

もうこの想いはとまれない!

だから魔王様、結婚してくれ!」


俺は魔王様の手を取って、勢いのまま綺麗な手の甲にキスをした。

...モチッとして肌触りの良い、しっとりとした感触。

魔王様の全身から感じる、フローラルで爽やかな香り。

俺は人生の絶頂に達した。


Oh , my birthdayどこまでも翔んでゆけ...!


思わず魂が浮遊していると、

魔王様も、俺の口づけに一瞬で沸騰したようだった。

「あ、あわわ...」


「ど、ど、ど、どうすれば!?」


目をぐるぐると回して、慌てふためく魔王様。

そんな姿も愛らしい。


「か、考えてみますからぁー!?

今はごめんなさいぃ!」


魔王は『逃げる』を選択した!


しかし、勇者からは逃げられない!


「ダメですよ魔王様。俺は命をかけてここまで来たんです。逃げることは許されません」


俺は逃げる魔王様を後ろから優しく抱きしめる。


そして魔王様の耳元に小さく囁いた。


「愛してますから」


...そして綺麗な首元に口づけをした。


「は、はいぃ...」


俺の熱烈なアプローチを受け、魔王様は赤くなった顔でゆっくり頷いたのだった。


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