第2話 勇者の俺、魔王様に一目惚れしました

俺が魔王様ガチ勢になったのは、何を隠そう五年前のあの日だ。

あの日、...魔王様が人類に宣戦布告した日、俺は恋に落ちた。


王国に対して行われた大規模投影魔法、そこに魔王様が映っていた。


俺が初めて魔王様を見て思ったのは、

...おぞましい、だ。


今思うと昔の自分を殴ってやりたいが、でも仕方がなかったのだ。


その時魔王様は『氷龍王グレイシア』と名乗っていた。

その姿はまさしくドラゴン

今まで見たことのないほどのオーラ。

人類は、その強大さに恐怖した。


魔王様は投影魔法で、王国に住まう民草にこう語りかけた。


『我は氷龍王グレイシア。単刀直入に言おう。

我々魔王軍は、貴国に対し宣戦布告をする。

我々の目的は、貴国の土地の割譲、農業プラント及び研究施設の接収である。

これらを受け容れるというのなら、平和的な解決を試みよう。

諸君らに是非は無い。

服従か死、そのどちらかのみ。

...一月ひとつきだ。

一月以内に答えを出せ。

以上、諸君らの賢明な判断を期待する』


言うや否や、すぐに通信は途切れた。

あまりにも一方的な要求。あまりにも強大すぎる存在。

人々は阿鼻叫喚の有り様だった。


しかし、俺は見逃さなかった。

通信が終わる直前、氷龍王グレイシアの変身が解け、見目麗しい美少女が出てきたのを。


キラキラと輝く白銀の髪。

透明感のある雪のような肌。

目鼻立ちが整った凛とした顔。

そのターコイズブルーの瞳は宝石のように鮮やか。


一目惚れだ。

それも強烈な。

今まで恋愛に興味などなかったが、人生で初めて誰かを好きになれた。


歓喜の感情が駆け巡る。

俺は思わず叫んでいた!


「魔王様!俺は服従します!

一ヶ月も待ってなど居られない!

すぐそちらに向かいます!

なんたって愛してますから!」


白昼堂々の愛の叫び。

これには周りの人も違う意味で恐怖を抱いていた。


でも周囲の目なんて関係ない!

待ってて下さいね!魔王様!




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